| 今日では、集成材(しゅうせいざい)と積層材(せきそうざい)の明確な境が不明瞭になりつつあり、ネットの解説でも混同がみられます。確認しておきましょう。
集成材とは、厚めの挽板(ひきいた)または小角材(しょうかくざい)の繊維方向をほぼ平行にし、長さ、幅、厚さ方向に集成、接着したもの。
積層材とは、単板(たんぱん)のような薄めの挽板(ひきいた)を数多く重ね合せ接着成形した木材。ただし、一般的にいう合板の過程で造られる単板積層材(LVL)は除かられます。
両者にはこのように材料となる板の厚さや角材の違いがありますが、いずれも素材の節、不整木理などの不均質性を除いて、吸湿性も改良したものです。含水率は4〜10%、圧密による比重の増加、合成樹脂の硬化による圧縮強度の増加、大型材や曲材などが作れます。木材の効率的な使い方、貼り合わ技術の利用などで、同じ目的で造られたものです。
| | 集成材の例 | 積層材の例 |
集成材や積層材は、一般的に製材されて取り出された木材と比べ、製材の際にでる派生材の再生利用が可能で、加工により木材の節や割れ、目切れなどを除いて適切な強度の断面を作りだせます。
また、乾燥材の使用で材の狂いやゆがみが避けられ、長大材や曲げ材などの特殊形状の材をつくりだせる、など長所があります。下記にもう少し詳しく見てみましょう。
■■ ■■ | 自由な形状・寸法の部材が可能 | @ | 集成材は、幅、厚さ、長さ方向を自由に接着調整することができるため、長大材や湾曲材を製造することが可能です。自由なデザイン、構造計算に基づいて必要とされる強度の部材を供給することができます。
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■■ ■■ | 狂い・乾燥時の割れ・反りが少ない | A | 集成材はもともと水分を多く含んでいるため、乾燥が不充分だと狂い、割れ、反りが生じてしまいます。そのためひき板の段階で天然乾燥に加え、乾燥装置を用いて、含水率を15%以下まで乾燥して、狂い、割れ、反りの防止が図られています。
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■■ ■■ | 強度性能のばらつきが少ない | B | 木材の持つ、大節、割れなどの欠点を製造工程において除去し、小さな節(ふし)等の許容できる欠点は製品内に分散されることで、強度のばらつきが少なくなり、品質が均一化されます。
また、構造用集成材の製造時には、材料である挽き板(ラミナ)を目視及び機械的方法により等級区分し、必要に応じて適当な挽き板を組み合わせて接着集成します。これによって、強度性能の安定した長尺大断面の材料が得られます。
| | 特に性能規定化された建築基準法のもとでは、強度性能が表示でき、かつ保証される集成材は信頼性の高い部材です。 |
■■ ■■ | 木材の良さが残されている | C | 集成材や積層材は加工されて出来ていても、木材の良さは残されており、高温多湿の気候の日本の気候風土に適しています。湿気を吸収・放出する能力を持っており、急激な湿度変動の抑制や結露を防止します。
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■■ ■■ | 断熱性と、調湿能力にすぐれる | D | 木材は燃えますが、断面が大きくなると表面は焦げて炭化層ができ、内側への酸素の供給が絶たれるので燃えにくくなります。炭化実験によると1分間に0.6mm-0.8mmの速度で炭化すると言われています。
| | | この炭化層が保護層になるので、内部温度は発火点以下に抑えられ、構造上の必要な強度を保ちます。建築基準法令でも集成材の防火性能が認められています。
設計に当たっては、表面の「燃えしろ」部分を除いた残存断面を使って構造計算を行い、火災時に表面部分が焼損しても、建築物が倒壊しないことを確認します。集成材では「燃えしろ」部分の厚さは、火災の想定時間によって、25mmから45mmとされています。 |
蛇足ですが、火事で大切なのは、内装の不燃化と火災報知器の設置です。室内での火災時に、煙を吸うと数歩で歩けなくなるともいわれており、内装材を不燃化することは特に望まれます。また、火災に気付くのが住んでいる人たちが最も遅いことから、火災報知設備はぜひ設けたいものです。
出典:画像 集成材 マルトクショップ 出典:画像 積層材 中国木材 出典:火災の図及び文の一部 日本集成材工業協同組合。
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