| 廻り縁の納め方は、廻り縁の形状+壁の仕上げ材+天井仕上げ材との組み合わせや意匠上の選択などをあわせますと、ゆうに40種類程度が考えられます。高級な壁材には高級感のある廻り縁が必要です。従って、それぞれの壁や天井の仕上げ材にふさわしい廻り縁を選択することになります。
しかし、廻り縁の形状そのものには、それほど多くの種類があるわけではなく、大きく分けるなら、下にあげる4種類程度です。現在使われている最もポピュラーの納まりをあげてみました。その中でもさらに絞るなら、図 1(6も含めて)か図 3(5も含めて)のいずれかがほとんどです。
実際の施工例を見てみましょう。
図 1は天井付近の断面図です。壁と天井の接する部分に焦げ茶色の木らしいものが見えます。これが廻り縁です。木に見えますが、これは塩化樹脂製品です。
図 2はその製品図です。製品は塩化樹脂製品で出来ています。これは既製品の例ですが、実際の木製品を加工したり注文に出して作ることも出来ます。既製品には他にアルミやステンレスの金属製品もあります。出来不出来がなく、値段も手軽ですので殆どの場合、既製品を使用します。
焦げ茶色が廻り縁
図 1
|
左の図のメーカの製品断面
図 2
|
図 3は壁と天井を軽鉄下地で、アルミ製の廻り縁の廻りの断面図です。事務所ビルやテナントビルでは、間仕切りは軽鉄製下地にボード貼りである場合がほとんどです。
廻り縁も塩ビ製であることが多いのですが、少し高級な作りとする場合は、 図 3のようなアルミを使います。塩ビ製より硬質のため廻り縁の加工が少し簡略化していますが、見た目は殆ど同じですが、塩化樹脂製品よりたわみなどがなく、シャープなラインが出せるのが魅力です。
図 4は下地が木製にボード貼りの壁と天井での塩ビの底目地です。天井にクロス貼りなどをすることで、廻り縁自身をあえて見せないようにしたものです。
図 3と4ともに、図 1のような廻り縁が現しではなく一段引っ込めた底にあるため「隠し廻り縁」と呼ばれています。これを目地とみるなら底目地ということになります。下地が軽鉄の場合でも、木製の場合でも納まりに差はありません。塩化樹脂製(塩ビ製)の廻り縁は安価なため非常によく用いられます。
図 3と4は時代劇の捕り物で同心が持っている十手に似ていることから「十手(じって)型廻り縁」と呼ばれます。
壁際に目透かし目地(底目地)の例
図 3
|
これも図 3と同じ納まりの一例
図 4
|
図 5は壁側面に目地を設ける「隠し回り縁」の一種です。壁に底目地を設けるもので、これまで解説してきたものからいえば、特殊な例といえます。時々見かけることがあります。
図 6は図 1の簡略版とも言えるもので、事務所ビルやスーパーなど数多く用いられています。いわゆる「コの字(このじ)型と呼ばれる廻り縁です。アルミや塩化樹脂製(塩ビ製)が良く使われます。カタカナのコの字の形をしていることからこうよばれています。この目地を作らないおさまりは、図 4のように目地を作るおさまりと共に、よく使われる廻り縁のおさまりです。
壁面に透かし目地を取った例
図 5
|
図1の簡略版で多用されている
図 6
|
例として、挙げたのが、図 7です。我が家の書斎としている室せす。塩化樹脂製(塩ビ製)の廻り縁で、図 4のように天井面に底目地を取っています。
図 8も我が家の洗面脱衣室で、この部屋のように、特に重要でもない部屋であったため、廻り縁を取っていません。天井も壁もビニールクロス貼りで、取り合いは白いシーリングで、醜さを隠しています。
写真ではボケた感じで見えるまずさもありますが、実際にもスッキリしません。また、近づいて見ますと、取り合い部にシーリングがありますが、すっきりと通っておらず、美しくありません。
だからこそ、廻り縁は必要なのです。本末転倒しているわけですが、壁も天井も同じクロス仕上げのような場合に、コストダウンの一環でしょうか、こうする納め方が最近は多くなりました。住宅でもそのほかの用途の建物でも、主要室以外にしか使わない納め方です。建物は、建売住宅です。廻り縁をつけることを、選ぶことが出来ませんでした。
我が家の一室で塩ビ製の廻り縁 (目地あり、かつ底目地の納まり)
図 7
|
全く廻り縁を設けないケース
図 8
|
図1 2 4 5 6の出典:フクビ化学
|
|