| 15. 壁タイルの特殊下地への対応(1) コンクリート地とALC地 |
タイル貼り下地としてはモルタル下地が一般的ですが、最近では躯体コンクリートや帳壁材を下地としてタイル貼りを行う例が、非常に増えてきています。ここでは、躯体コンクリート、ALC板、セメント押出板をタイル下地とする場合の施工尾ポイントについて、述べていきます。なお、直貼り(じかばり)工法とは、タイルを貼りつける壁に下地を要しない工法という意味です。
大形パネル型枠の使用などにより、コンクリートの仕上がりの精度の向上。最近では工期の短縮、省力化、コストダウンを目的として、コンクリートに直(じか)にタイルを貼る「直貼り工法」(じかばりこうほう)が多くなっています。
しかし、ともすれば施工の品質向上よりも、工期短縮やコストダウンを指向するあまり、タイルの剥落する事故を起こすことにもなりかねません。従って、直貼り工法の問題点を十分に考慮して施工を行うことが必要です。また、剥離を防止するために、MRC工法で躯体を作成してタイル貼りを行うことを推奨します。
MRC工法とは、モルタル・コンクリート・リベットバックの略称の工法です。外型枠に専用気泡緩衝材である難燃タイプのMCRシートを取り付け、コンクリート打設による側圧でコンクリート表面に丸型のアリ足状の凹凸を設けます。モルタル下地やタイルとモルタルとコンクリートの一体化により、剪断応力による界面のズレを防止し、各層を拘束する事で剥離を防ぎます。
タイルにも裏足がある様に躯体側にも裏足を設け挙動を拘束し、ズレを生じさせない事、浮きを防止する事を特徴とする工法です。
コンクリート直貼りの問題点 | @ | コンクリート面は、モルタル面程精度がよくないため、不陸補修が必要です。
| A | コンクリート面は平滑で、かつ不陸補修のため均一な吸水性が得られず、表面処理が必要です。
| B | 緩衝材としてのモルタル層がないため、コンクリートの挙動に対する追随せいを確保することが必要です。
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コンクリート直貼り施工のポイント | @ | 大きな凸部は、ハツリをかけ、躯体表面の脆弱な部分を取り除いてからデッキブラシ等を用いてから水洗いを行います。また、凹部やジャンカ部、ハツリ部はポリマーセメントモルタルを塗り付けて補修します。コンクリート面の制度は右表を目安とします。
| A | 躯体表面処理はポリマーセメントモルタルのこすり塗りを行います。ポリマーセメントこすり塗りの場合は、合成ゴムラテックス系、EVAエマルジョン系、または、アクリルエマルジョン系おいずれかで水湿したコンクリート下地に金ごてを用いて、1〜2o厚さに塗ります。
| B | タイル貼りは、一般モルタル下地への施工と変わりませんが、接着性の向上とコンクリート挙動に対する追従性を向上させるため、張り付けモルタルはポリマーセメントモルタルとします。
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コンクリート直貼り施工の必要面精度 | 改良圧着貼り | ±3.0o/2m | 改良積上げ貼り | ±3.0o/2m | 密着貼り | ±3.0o/2m | モザイクタイル貼り | ±2.0o/2m | マスク工法 | ±2.0o/2m |
ALC板は建物の軽量化、工期短縮、コストダウンに合致する材料としてその需要をのばしており、その仕上げ材としてタイルを使用する例も増加しています。タイル張りの下地としてのALC板は、吸水率が大きい、表面強度が弱いなどの問題を抱えています。しかし、これらの問題を十分に把握し、適切な対策を施すことで、ALC板へのタイル貼りが可能になります。
ALC板下地の問題点 | @ | ALC板は吸水性が高く、モルタルの水分を急激に吸収するため、ドライアウトによる接着性の低下を招くおそれがあります。 | A | ALC板は表面強度が低いため、タイルの保持力も弱くなります。 | B | 600oピッチでパネルジョイントがあり、ジョイントにまたがってタイルが張られると、タイルにひび割れ、剥離が生じやすくなります。 |
ALC板へのタイル貼り施工のポイント | @ | ALC板の吸水調整処理を、プライマー塗布又はポリマーセメントモルタルのこすり塗布のいずれか一方、あるいは併用で行います。プライマー塗布の場合は、EVAエマルジョン系またはアクリルエマルジョン系のいずれかを金ごてによって1〜2oの厚さに塗り付けます。また、タイルの貼り付けモルタルはポリマーセメントモルタルとし、タイル張りは改良圧着貼り、密着貼り、マスク工法のいずれかで行います
| A | ALC板は表面強度が低いため、タイルを含めた仕上げ厚さを出来るだけ薄くすることが必要です。モルタル下地は作成せずに直貼りとし、下地調整モルタル、貼り付けモルタル、タイルを含めた総厚を20o以下となるようにします。タイルの大きさは原則として、二丁掛、または150o以下とし、厚さは15o以下とします
| B | タイル貼りを行うALC板の構成は、縦壁スライド工法か縦貼り挿入筋工法とします。縦壁スライド工法の場合、層間変形角を押さえた構造設計(1/250以下)がなされていれば、建物高さ30mまで適用可能です。パネル間の伸縮めじは5〜6枚毎にの縦目地に儲けますが、その他にも階毎の水平目地、コーナーパネルと一般部パネルとの取り合い部など建物の動きを考慮して、パネル内にゆがみを生じさせないような位置と幅の伸縮目地を設けることが必要です
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