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現場から外注として自宅で施工図を書く、いわゆる持ち帰りの「施工図」書きの仕事をする人があります。施工図は書けるけれども、現場の事務所で書くのは嫌だ、と言う方も決して少なくはないのです。勿論、現場に出なくても書くわけですから、それだけの、知識と経験をもっている人ということになります。
こう言う人は、現場に出向き打合せを行い、資料を持ち帰って自宅とか会社で「施工図」を書くわけです。このケースでは、個人としての場合は、いわばアルバイトのような状況です。保険があるわけでもなく、会社としてのちゃんとした契約のある取引、と言うわけでもなく、(個人でも支払いの関係上便宜的に事務所名くらいは持っていますが、実体はただの個人です)、何かの保障があるわけではありません。
仕事がなければ、注文も入らない。頼み込んで貰うと、余分な作業までやらされる。個人の持ち帰りの施工図書きが一番辛い仕事だと思います。しかし、自宅での施工図屋に一度なった人は、もう現場に出たり、転職してサラリーマンになったりはとても出来ません。代金は安いけれども、時間は自由に、やれます。同僚や、上司が居るわけではないので、気ままにやれます。納期さえ守れれば良いわけです。ですから、この仕事を続ける以外にはないのです。誰かに強制されてやらされて居るわけではないのですから、自ら状況を改善していく以外にはありません。
それでも、最近は図面も製図器からCADに代わり、一部分を人に手伝ってもらって後でその部分を切り貼りして、簡単に合成出来るようになりました。それと、インターネットの普及で、書きあがった施工図をメールに添付して、届けることも出来る様になり大変便利になりました。交通が不便な時や、持参する時間がないような時には、本当に便利です。また、打ち合わせに出向かず、ファックスやメール、電話で打ち合わせて仕事をしている人もいます。こういう方法は、今後益々便利になっていくものと思います。ただし、こうした事は、そこそこの付き合いが出来てきて、信頼感が生まれると、施工図だけでなく、その会社独特の、見積もりソフトや提出書類など、幅広い仕事も入るようになりますので、施工図だけしか書けない。というのではなく、エクセルやワードと言ったものもこなせたり、3Dソフトなどが出来ると将来はそう悲観したものでもありません。要は、常にスキルアップを心がけて、新しい何かで、チャンスがあれば、起業でもするんだという、気構えでがんばってほしものです。
こうしたケースは一枚いくらということになります。なぜなら、時間での管理は、監督者がそばに居るわけではありませんから、8時間かかっても証明の手立てはありません。致し方ない事です。勿論、打ち合わせの時間には本人=施工図の書き手と言った場合は、書く時間が取られる訳ですから、打ち合わせ代は別途請求ということになります。又、出来上がった、図面が一度でOKということはまずありません。
ですから、当然、図面の修正や訂正が生じて来ます。その修正や訂正は施工図の書く側の誤りによるものなのか、あるいは、頼む側の誤りや変更によるものなのかを、はっきりさせたいところです。書く側のミスならこれは、当然、見返りのない訂正と言うことになります。しかし、この訂正にかこつけて、変更などもついでの事だからと言った具合に、押し付けられる事もそう少なくありません。それを、嫌だとか、金をくれとは、なかなかいえないものなのです。それっきりの関係なら、どんな手でも使って回収も出来ますが、仕事をくれる人、貰う人の関係は、歴然としているのです。今、A1サイズの施工図で一枚3万円もらえるかどうか。
え_いいじゃないか?とんでもない、一枚の施工図をそこそこに仕上げようと思えば二日はかかります。私なら3日欲しい。そうすると、3万円/3=1万。月30日働いても30万です。しかし、それだけの仕事が今はないのです。
現状の建築業界の状況は、少ない仕事の取り合いの状況が続いており、打ち合わせ代や、修正代が貰えるとは限りません。それよりむしろ、持ち帰りの仕事自体が極端に少なくなっているようです。私の知っている人も仕事がなかなか無く、会社として4-5人いた社員も2人に規模を縮小させているようなところもあります。私の友人なども廃業しました。ともかく今は不況とデフレの圧力が強く,その皺寄せは裾へ行くほど強くなります。持ち帰りの仕事も御難の時代です。
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