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鉄にクロムを少しずつ添加していくとだんだんとさびにくくなっていきます。そうして出来るのが、ステンレスです。ステンレスは鉄に炭素が12%以下で、クロムを10.5%以上を含有した特殊鋼の総称です。正しくは、ステンレス鋼とよびます。
ステンレスとは「Stainless」のことで、「錆びない」という意味です。しかし、特定の環境、使用条件の下では錆びることがあります。よく、「ステンレスは錆ないはずなのに錆びたではないか」などと苦情を受けることがありますが、「錆びにくい」というだけで実は錆びるのです。それについては、後述(4ページ)します。
「さび」とは、金属の元素が大気中等の酸素と結びついた「酸化物」のことです。ステンレスにも同じように表面に「さび」である酸化物が形成されます。しかし、仮に錆びてもどんどん腐食が進むということはありません。それは、ステンレスは鉄にクロムを添加するとクロムが酸素と結合して鋼の表面に薄い保護皮膜 (不動態皮膜)を生成するからです。
これが不動態皮膜と呼ばれるもので、錆や汚れの進行を防ぎます。また不動態皮膜は100万分の3nm(ナノメートル)程度のごく薄いものですが、大変強靭で、一度こわれても、周囲に酸素があれば、瞬時に自動的に再生する機能をもっています。つまりステンレスの表面の酸化物は、クロムを多く含んだ非常に薄く緻密な皮膜となり、ステンレス自身をさびの原因となる酸素等から守るバリアーとなるのです。ステンレスがいつまでもピカピカなのは、このバリアーのおかげです。
つまり、錆びることが極めて少なく耐食性・耐久性・意匠性・耐火性・低温特性・加工性などで非常に優れた特性を備えています。またメンテナンスが容易であることや100%リサイクルが可能な材料として高く評価される材料です。
以上述べてきたことがステンレス全般の特長です。JISでは その記号を「SUS(サス) 」と定めています。種類も100種類以上あります。さらに、メーカーにも使用箇所に特化した独自製品があり、それらを加えるとさらに種類は増えます。
よく建築の設計図の仕上げの欄に「SUS]と書いてあるのを見かけますが、これは「ステンレス=SUS(Steel Use Stainless)」意味です。この場合、どの種類を指しているのか、また仕上げはどの程度のなのか、明示がないケースがほとんどで、積算する時には大抵質疑に上る項目です。ステンレスの仕上げには、いくつもの種類があって、価格も大きく違ってくるからです。この仕上げについても、後述(5ページと6ページ)します。はっきり言えば、設計者もSUSに対する理解があまりありません。
| | | ステンレスを使用した炊飯器です冷たい感じもしますが、質素で清潔感があり美しく、手入れが簡単です。
| | 業務用の厨房に使用されているステンレスの例。厨房と言えば必ずステンレスが使用された、器具、台、機器がずらりと並んでいます。
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