| 手すりは建築基準法のどの条文を根拠に高さや形状などを決定しているのでしょうか。案外知らない人が、建築の設計や工事に携わっている人の中にも多いようです。それは建築基準法の中でわずかな記載しかないからです。
例えば、「手すりの記述は、基準法のどこに載っている」と聞けば大抵の人が答えられません。余程、建築法規に詳しい人であってもです。
「一般の手すり」といい方は、適切ではないかも知れませんが、ここでは階段を除いた手すりのことを指しています。その条文は下記の通りです。この条文は、下記の「階段の手すり」の解説でも使います。同じ条文です。
(屋上広場等)
建築基準法施行令 第百二十六条
屋上広場又は二階以上の階にあるバルコニーその他これに類するものの周囲には、安全上必要な高さが一・一メートル以上の手すり壁、さく又は金網を設けなければならない。
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とあります。1階なら設けなくてもいいという解釈になります。これについては次ページに記載しています。
階段に設ける手すりの高さにについては建築基準法や建築基準法施行令に詳しい記述がありません。それが、災いしていろいろな解釈や取り扱いがなされ、混乱しています。そしてそれが階段だけでなく、手すり全般に広がっています。
階段の手すりについては、次の条文があります。
建築基準法施行令 第25条(階段及び踊場の手すり) 1 階段には、手すりを設けなければならない。
2 階段及びその踊場の両側(手すりが設けられた側を除く。)には、側壁又はこれに代わるものを設けなければならない。
3 階段の幅が三メートルをこえる場合においては、中間に手すりを設けなければならない。ただし、けあげが十五センチメートル以下で、かつ、踏面が三十センチメートル以上のものにあつては、この限りでない。
4 前三項の規定は、高さ一メートル以下の階段の部分には、適用しない。 |
つまり、階段には手すりを設けなさいとはあるものの、その高さについての記述はないのです。では、一部の行政が、手すりの高さが1.1m以上という根拠を主張し、指導するの、はどこから来ているのでしょうか?冒頭に書いた、条文の繰り返しですが次に依っています。
(屋上広場等)
建築基準法施行令 第百二十六条
屋上広場又は二階以上の階にあるバルコニーその他これに類するものの周囲には、安全上必要な高さが一・一メートル以上の手すり壁、さく又は金網を設けなければならない。
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から来ているのです。しかし、この規定を階段の手すりに適用するのには、無理があります。階段の手すりが、1.1mもあれば高くて非常に使い辛いからです。
さて、階段1の解説でも書きましたが、毎年、住宅内での怪我の内で一番多いのが階段での事故です。急な階段をなんの手すりもなく下りるのは、ヒヤリとすることが少なくありません。手すりがあれば、強く握らなく滑らすように触っていても、安心感は格別です。
そこで、住宅の狭い階段でもまた、他の階段でも、手すりを追加で設けても一定の条件を満たせば、階段の有効幅から、除外される規定が新たに設けられました。その条文は下記の通りです。
建築基準法施行令 第23条3項
3 階段及びその踊場に手すり及び階段の昇降を安全に行うための設備でその高さが五十センチメートル以下のもの(以下この項において「手すり等」という。)が設けられた場合における第一項の階段及びその踊場の幅は、手すり等の幅が十センチメートルを限度として、ないものとみなして算定する。
建築基準法施行令 第23条4項 4 第一項の規定は、同項の規定に適合する階段と同等以上に昇降を安全に行うことができるものとして国土交通大臣が定めた構造方法を用いる階段については、適用しない。
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なお、建築基準法施行令 第23条4項については、個別に認定を受けた場合であり、一般的ではないので、今回の解説からは除きます。
上記 「建築基準法施行令第23条3項と4項」 については下記の■3項及び4項についての解説で図を交えて説明します。
この条文をいくら読んでも階段という字はどこにも見当たりません。これは、上記で書いた「一般の手すり(階段以外)」の条文です。
ですから、階段に高さ1.1mの手すりをつけるなどというのは本来無理があるのです。しかしながら、先にも書いたとおり、建築基準法施行令25条に手すの高さの明記がないばかりに、階段の手すりにも1.1mの手すりをつけよう、というような解釈が出てきたのです。
階段の手すりが1.1mもあれば手すりとして掴まることは容易ではありません。階段の手すりは0.8mから0.85m高くしても0.9mが限度です。そうでないと手すりとして使いづらいのです。
しかし、建築確認などでは建築指導課等によっては1.1mを要求しているところもあります。実際の建築の使い勝手を知らない、身勝手な解釈と言わねばなりません。
■ 建築基準法第25条の条文解釈
1項は、階段には必ず手すりを設ける必要がある、ということです。両側とは書いていませんので、片側でも良いことになります。両側に設けてももちろんよいのですが。必ず手すりを設けることになったのは、毎年階段から転落などの事故後を絶たないためです。
2項は、階段の両側には、階段に接している壁かそれに代わるものを儲けなさいの意味です。ただし、手すりが設けてあれば不要です。1項でも書いたとおり、必ず階段には手すりが必要ですので、その手すりがあるなら、壁かそれに代わるものはいらないということになります。しかし、たとえ階段の両側に壁やそれに代わるものがあっても、手すりは設けなくてはなりません
3項は、特別にややこしくはありませんね。「・・・以下で、かつ、踏面が・・・」のかつは両方満足しなければならないという意味。
4項は、上記1項の「階段及びその踊場の両側に側壁又はこれに代わるものがない場合にないては、手すりを設けなければならない。」は階段の高さが1メートル以下だったら手すりは不要との意です。実際問題としてあったほうがよいですが。
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■ 建築基準法施行令第23条3項及び4項についての解説
平成10年6月12日に公布された「建築基準法の一部を改正する法律」の2年目施行分が平成12年6月1日に施行されました。すべての階段が対象です。 改正されたのは建築基準法施行令第23条3項と4項です。と言うか、改正前は2項しかなくの3項と4項が追加されました。 改正された建築基準法施行令23条の3項と4項とは下記の緑色の文字の部分です。
3 階段及びその踊場に手すり及び階段の昇降を安全に行うための設備でその高さが五十センチメートル以下のもの(以下この項において「手すり等」という。)が設けられた場合における第一項の階段及びその踊場の幅は、手すり等の幅が十センチメートルを限度として、ないものとみなして算定する。
4 第一項の規定は、同項の規定に適合する階段と同等以上に昇降を安全に行うことができるものとして国土交通大臣が定めた構造方法を用いる階段については、適用しない。
この内でわかりにくいのは『階段及びその踊場に手すり及び階段の昇降を安全に行うための設備でその高さが五十センチメートル以下のもの』の高さが50cmの部分です。これは、手すりの高さを規定しているものではありません。階段の昇降を安全に行うための設備を指しています。(下図4に説明しています) 従って階段の手すりの高さは75cmから85cmの間の程度と一般的で良いわけです。
住宅の階段の手摺は従来では階段幅の算定における、手摺の取り扱いは規定されてませんでしたが、今回の改定で手摺が設けられた場合、手摺の幅10cmを限度にないものとみなして階段幅を算定できるようになりました。
| 手すりの出幅は左の図のように通常7-8cmで収めることが可能です。従って10cm以内には大抵納まります。
手すりの太さはいろいろとありますが、住宅など子供も掴まるような手すりを考えるときには、あまり太くならないようにする必要があります。図の3.5Φは適切な太さでしょう。
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会社などの成人者しか利用しないような手すりでは4.2Φ程度かやや太いものも考えられます。
手を手すりと壁との間に差し込んで手すりを握りますがおおよそ4cmあれば問題ないでしょう。
また手摺の設置について、従来は階段や踊場の両側に側壁等があれば手摺は設置しなくてよかったですが、今回の改正で少なくとも片側には手摺を設けなくてはならなくなり、2項では両側に側壁等がある場合でも手すりは少なくとも片側には設けなければならないことになりました。
下記に階段の手すりをケース別にまとめてみました。 有効幅75cmは住宅の階段を意識したものですが、他のすべての階段の有効幅にもこの考え方は適用されます。
ケース | 階段の有効幅の算定の取り扱い | 1. 手摺の出が10cm以下の場合 ↓
| 手摺が無いものとして有効幅を算定します。
| | 2. 手摺の出幅が10cmを超える場合 ↓
| 超える部分の長さを実際の階段幅から引いて計算します。残ったな幅が有効幅です。
| | 3. 手摺を階段両側につける場合 ↓
| 手摺が両側とも、出幅10cm以下のものであれば、手摺はないものとして、有効幅を計算します。
| | 4. 階段の昇降用の設備を配置 した場合 ↓
| 手摺と同様に出幅10cm以下は、ないものとして有効幅を計算します。 (設備の高さが50cm以下のものに限る)下図では10cm内に収まっています。高さも椅子面まで49cmです。
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画像は新光産業よりの出典。 |
手摺の高さは大体階段の踏み面めんから、75cmから85cm位の間が標準ですが、高齢者や、子供のことを考えてもう一段下に追加して設ける場合は、65cmから70cm程度で考えてみてください。
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