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廻り縁を解説する前に、まずは見切り縁と呼ばれるものに少し触れておきます。
回り縁(まわりぶち)は回縁とも書き、見切り縁(みきりぶち)と呼ばれるものの一種です。それでは「見切り縁」とは何でしょうか?
まず「見切り(みきり)」とは連続した仕上げの終わりや複数の仕上げの取り合い部分のこと、あるいはその納まり(最終的な出来具合)のことです。百貨店やスーパーなどでの「見切り商品の特売」とか仕事や商売でのある決断をする時に「見切りをつける」とかいいます。それと同じように使われている言葉です。
例えば、天井と壁や壁と床が接する部分など複数の面や仕上げが他の異なる部分が接する部分のこと言います。
色々と異なったところが集まるところの納まりがなかなか思うようにはうまく行かず、どうしても綺麗でない、仕事が雑になりがちで、空間がだらしなく見えます。
また、こうした面の交差する部分や同一線上にある仕上げでも、その仕上げの種類が違うと、きれいに収めることは非常に精度が要求され、当然気を使わざるを得ません。
しかも、工事は雑になりがちです。これは建築にかぎりません。物事の最終部分の仕上げが最も難しいのです。
そこで、こうした部分をすっきりと見せ、なおかつ不出来になりやすい部分を目立たないように隠してしまう役目が見切り縁の役目なのです。隠すという言葉は適当ではありません。建築では、それを「逃(に)げる」といいます。うまい表現ですね。
| | さて、廻り縁とは何かを説明しましょう。
天井と壁の接する部分に設ける見切り縁のことを「廻り縁(まわりぶち)」と呼んでいます。
部屋の中の天井と壁の際(きわ)をぐるりと廻っています。
なお、廻り縁を「廻り子(まわりこ)」とも呼びます。
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■廻り縁の仲間(見切り縁)の幅木・畳寄寄せ・雑巾摺り |
見切る意味で幅木も見切り縁の仲間ですね。幅木なら床と壁の接するところに設ける見切り縁というわけです。なお、幅木(はばき)については、別のページで解説していますのでここでは触れませんが、『畳寄せ(たたみよせ)』と『雑巾摺り(ぞうきんずり)』につては少し解説しておきましょう。
『畳寄せ(たたみよせ)』とは和室において畳の壁とのきわに幅5−10mmの一本の細い木製の材が壁に沿って設けられています。この材は、柱から柱の間に設けられ、かつ、柱の出ている面と同じ位置にあります。
畳を敷くため柱より出っ張ってはいません。畳を敷いたり上げたりするときに床近くの壁を保護するためであり、出っ張っている柱と壁との隙間を埋めるためでもあります。見えているのは5-10mmと細いのですが、実際は壁を支えていますので、これに壁の厚さが加わったサイズになります。その幅は、壁仕上げにもよりますので一概に言えません。高さは畳の厚さに50-60mm程度に合わせます。
『雑巾摺り(ぞうきんずり)』は和洋室の「押し入」れや「物入れ」、和風の建物の「板間(いたま)」に見ることができます。「押し入れ」や「物入れ」では床や棚板と壁仕上げのきわに打ち付けられる木製の細い材です。
「畳寄せ」と同様に壁仕上げを支えています。雑巾で拭(ふ)くことから雑巾がこすれる、すなわち雑巾摺りというわけです。
また、和風の建物、わかりやすい例では、時代劇の剣道場などの板張りの床と壁の腰板などの取り合いにも使われています。
| | 畳寄せ(たたみよせ)の例
イラストは和室の壁際のを縦に切ったものです。ラスボードは仕上げの塗り壁がくっつき易いようにボードに大根おろしのおろし金のを裏から見たような窪みがついている特殊なボードです。
| 雑巾摺り(ぞうきんずり)の例
これは、押し入れの中段の画像です。黒い線で示したものが雑巾摺りになります。下の段においても同様の納まりとなっています。
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次のページから、廻り縁の例を見ていきましょう。
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