| ステンレスは一種類と思いがちですが、いくつかの種類に分けることが出来ます。JISではその結晶組織から 5 つに分類しています。 4 つの系統は,それぞれオーステナイト系,フェライト系,マルテンサイト系,二相化系です。主添加元素は下表の通りですが、どの系列でも制限元素として,炭素,ケイ素,マンガン,リン,硫黄の含有限度が定められています。
オーステナイト系 | 主添加元素 | ニッケル,クロム | 特長 | 一般に延性および靭性に富み、深絞り、曲げ加工などの冷間加工性が良好で溶接性も優れています。さらに耐食性も優れ、低温、高温における性質も優秀です。
| 使用実態 | 最も多く用いられているステンレス鋼です。代表例は SUS304 です。建築で使用されたり、家庭にある様々ステンレス鋼製の製品の大部分や,車輛材料(現在は SUS301 であることが多い)などはこの合金です。製造量は全ステンレス生産量の60%を越えます。
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フェライト系 | 主添加元素 | クロム | 特長 | この系統のステンレスは熱処理により硬化することがほとんどなく、焼なまし(軟質)状態で使用されます。また、マルテンサイト系ステンレスより成形加工性および耐食性が優れており、溶接性も比較的良好であるため、一般耐食用として広く用いられています。
| 使用実態 | 一般耐食用として広く用いられています。例えば厨房用品、建築内装、自動車部品、ガス・電気器具部品などで、主に薄板および線の形で使用されています。
近年、製錬技術の進歩によって低炭素にすることができるようになり、SUS430LX、SUS430J1Lなどの耐食性、成形加工性のより優れた鋼種が豊富になりました。
極低炭素・窒素としたSUS444、SUS447J1、SUSXM27クラスのいわゆる高純度フェライトステンレスは、耐食性が一段と優れており、また塩化物応力腐食割れを起こしにくいため、温水機器や化学プラントなどにも用途が広がっています。
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マルテンサイト系 | 主添加元素 | クロム | 特長 | 代表的なものはSUS403、SUS410の13クロム系のステンレスです。 このグループのステンレスは、焼入れにより硬化するので、成分と熱処理条件を選ぶことにより広範囲の性質が得られます。また耐食性のうえからは、炭素量が少ない方が望ましいのですが、反面炭素含有量の多いものは耐磨耗性が優れています。
| 使用実態 | 棒鋼、平鋼の形状で使用されることが多く、高強度、耐食・耐熱性が必要な機械構造用部品、例えばタービンブレード、ポンプ、シャフト、ノズルなどに使用されます。
SUS420(13ク口ム高炭素)クラスは刃物、外科用器具として用いられ、最高の硬さを有するSUS440(18クロム高炭素)クラスは軸受、ベアリングに使用されます。
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二相系 | 主添加元素 | ニッケル,クロムオーステナイトとフェライトの二つの金属組織 | 特長 | オーステナイトとフェライトの二つの金属組織(二相)をもつステンレスです。 物理的性質はフェライトとオーステナイトのほぼ中間です。また、耐海水性、耐応力腐食割れ性に優れ、そのうえ強度も高いという性質があります。
| 使用実態 | 海水用復水器 熱交換器および排煙脱硫装置などの公害防止機器や各種化学プラント用装置に用いられています。 製造される形は主に厚板、管、鋳物などです。
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析出硬化系 | 主添加元素 | クロム ニッケル | 特長 | 冷間圧延後析出硬化熱処理により、マルテンサイト地に微細なAlを含む金属間化合物を生じさせることにより非常に高い硬度の得られるステンレスです。オーステナイト系ステンレスと比べ、耐食性がやや劣ります。 析出硬化とは、固溶化熱処理(溶体化熱処理)の後、時効硬化(析出硬化)を人工的に行うことをいい、ステンレスの600番台(SUS631、SUS632J1など)、マルエージング鋼 などが代表的です。
| 使用実態 | スプリング ボルト バルブ 航空機部品 建築用金具 ヨット シャフト スチールベルト |
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