| ■静電気で重要な湿度について
意図しない静電気の発生は工場における生産現場や評価環境で様々な被害をもたらします。静電気で最も重要なものは、湿度の管理です。静電気が発生しない湿度は50〜60%とされています。が、この説明では十分ではありません。
一般的に温度が高い部屋ほど湿度も高くなります。これは、温度が上がると空気がより多くの水蒸気を含むことができるからです。室温が上がると、実際にあらゆる物から水蒸気が空気中に放出されることから、水蒸気の量は増えます。
逆に冬場のような低温下においては、温度が高い部屋と同じ大きさの部屋であっても低温の空気は少ししか水蒸気を含むことができません。いわゆる乾燥した状態になりやすいわけです。同じ湿度50パーセントでも高温の部屋と低温の部屋では実際の水蒸気の量は違うのです。例で説明します。
同じ部屋の大きさで、座席がその温度で含みうる最大の水蒸気の数だとしますと、
例えば、 0度の部屋→座席の数が 10席 実際の埋まっている席5 30度の部屋→座席の数が 50席 実際に埋まっている席25
とします。(0度や30度の部屋の座席とは0度の時あるいは、30度の空気が含むことができる水蒸気の数をたとえで示しています)
0度の時も30度の時も湿度は同じ50パーセントとなります。しかし、水蒸気の数は30度の方が5倍も多くなります。従って、単に湿度を50パーセントがいいというだけでは、正しくないということが解るはずです。そこは、室温が作業環境に適した18度〜22度程度で湿度が50パーセント程度が一般的であろうかと思われます。
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■工場での静電気の被害
上記で説明したように、工場内での湿度をあげるためには、部屋の温度をあげると同時に水蒸気の調整、つまり湿度の供給調整が重要となります。湿度が生産過程に悪影響が出ない範囲ということになります。
静電気のトラブルで、とくに被害が深刻なのは半導体工場です。半導体は内部で微細な回路パターニングや配線を行っているため、静電気によるわずかな電流が流れてもパターンや配線部が溶断することがあります。その他、生産現場での静電気の弊害をあげてみました。
生産現場での静電気の被害 | @ | ごみの付着 | 静電気が発生し、埃やゴミは製品に付着する。 | A | 静電破壊 | 帯電した静電気の放電現象により、製品が破壊される。 | B | 塗装・印刷不良 | 静電気により、塗装や印刷などにムラが生じる。 | C | 生産効率の低下 | 設備にフィルムがくっつき、フィーダーが詰まるなど、生産効率を低下させる。 また、ノイズが発生し、設備の誤作動を起こす場合もある。 | D | 発火 | 静電気放電により、火災や爆発が起こる。 | E | 電撃二次被害 | 静電気放電ショックにより、2次災害(作業者が驚いて物を落とす、足を滑らすなど)の発生。 |
■静電気の利用した製品
静電気は嫌われものですが、静電気を利用した工業製品もあります。上手く利用すれば、利益すら生み出すものに変えることも出来るという事例です。
複写機は心臓部に負の電荷を持った感光体ドラムというものがあります。コピーのとき、そのドラムにはコピーする書類などの像がうつされ、その像の黒い部分以外は電荷を失います。そのあとは静電気力を利用して黒い部分の電荷が残っている部分にトナー(紙に転写される顔料の黒い粉)をふりかけ、紙に固定します。
エアコンは静電気を利用している製品で、空気清浄機と同じ役割をしています。空気の中をただよっているホコリや小さなゴミを静電気でよせて集めます。静電気を発生させているだけではなく、最近はマイナスイオンや酸素の風を送るようになっています。マイナスイオンは静電気を中和する力があるといわれています。
コンビニや事務所や大型店舗などで見かけるコピー機です。白黒だけのコピー機では、はじめに静電気をためた状態の丸い筒があります。白い部分は光があたって静電気を打ち消してしまいます。黒い部分は静電気が残っています。この電気の量でインクをどのくらい出せばいいのかが決まります。パソコンに絵や文を取り込むスキャナーもコピー機と同じしくみです。
電気集塵機は、ガスの中に浮遊する細かい粒子などを静電気力を利用して除去する装置のことです。排ガス中の粒子帯電させ、それをクーロン力によって補集して分離します。
フィルターのクーロン力によって大気中の花粉やほこりなどを吸着します。クーロンとは二つ物質が正と負であれば引き合い、そうでないときは反発するというものです。マスクが正で花粉が正の静電気を帯びていれば、負の花粉はマスクにつき、逆ならマスクに付かないということで、花粉を防止できるものです。
塗装粒子をマイナスに帯電させ、プラスに帯電させた物体にふりかけて吸着させます。ムラなく吹き付けることができます。
人や物に帯電した荷電の放電によって患者などにショックを与えたり、放電のエネルギーにより可燃性の麻酔ガスに引火するのを防止するため、手術室などで人や医療機器が帯電するのを防止するために設ける導電性の床のことです。アメリカの例では、病院における麻酔剤爆発事故の27.4%が静電気のスパークによって起こっています。静電圧をゼロにする塗床仕上げです。
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