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 5. モルタル外壁の短所

 建物の外壁にモルタル塗りをする場合、長所より短所の方が多くなるのは残念なことですが、材料としては手ごろであり長い実績があることから、今でも利用され続けています。サイディングよりモルタル塗りを選ぶ人もいるくらいです。

 前ページにモルタルの長所を上げましたので、このページではモルタルの短所を取り上げてみました。


 ■ モルタル外壁の短所

 どんなものにも長所と短所はあります。また、長所が短所であることもあります。そこでこのページでは、モルタル塗り外壁の短所を取り上げます。


モルタルを外壁の短所
@
高コスト
A
施工期間が長い
B
熟練した職人が必要
C
クラックが生じやすい
D
重い
E
汚れやすく、それが目立ちやすい。

出典:ウィキペディア(@〜D)、Eは筆者




 @ 高コスト

 @ 高コストというのは誇大です。
 コスト面では現状においては、サイディングと同等と考えて差し支えありません。 モルタル塗りは、現状よりコストを下げることは難しいでしょう。材料費や少なくなってきた職人数を考えると、ほとんどコストダウン出来る余地がありません。


 それに引き換え、サイディングは工場生産であり、建設現場に運びこみ大工が打ち付けるだけのことであり、しかもその取り付けにも工夫があれば、より簡単に施工できて、現場への出荷価格を下げる余地は今後も十分にあります。


 しかし、実際に価格低下とならないのは、左官でのコストに合わせているだけだと考えられます。サイディングメーカーは進んでコストダウンはしているのでしょうが、それが販売にあえて反映させていないだけと理解するべきです。つまりは、利幅があるということになるのでしょうか。




 A 施工期間が長い

 A 施工期間が長いのは確かです。
 モルタル塗り壁は、通常、下塗り、中塗り、上塗りの3回に分けて塗られます。3回に分ける理由は、クラックと呼ばれるひび割れを、それぞれの塗り工程で十分に発生させることあります。その上で最終の塗り仕上げで生じたクラック(ひび割れ)が下に塗ったモルタルに波及しないようにすることになるからです。

 この工程には、十分な日にちが必要なため、どうしても施工期間が長くならざるを得ません。その期間に、雨天であれば期間はさらに伸びるなります。




 B 熟練した職人が必要

 B 熟練には確かに時間がかかります。
 職人と呼ばれる人たちは、見習いながら仕事こなしながら腕を磨いて熟練工となります。モルタルを塗る左官もそれは同様です。

 外壁にモルタルを塗りつける作業は見た目とは裏腹に、腕力が必要です。素人が塗ってもすぐに落ちてしまいます。建設現場で職人同士が腕相撲をして、左官に勝てるものはいません。片手でモルタルを乗せた鏝板(こていた)を持ち、片手でそのモルタルを壁に塗りつけます。両腕とも力がないと出来な仕事です。


 これらの職人が少なくなった理由は、失われた20年と呼ばれるバブル崩壊後の建設不況によるところが多いと思います。この期間には、建築の職人は、減少し続ける仕事の量に、廃業を余儀なくされ続けました。仕事が減る分仕事の単価も下がり新たなる、職人になる者の意欲を削ぎ続けてきました。




 C クラック(ひび割れ)を生じ易い

 Cクラック(ひび割れ)を生じ易いのはモルタルの最大の欠点です。

 外壁をモルタルのように水を使って作った材料で仕上げる方法のことを、湿式(しっしきこうほう)仕上げと呼び、サイディングのように、水を使わず、胴縁と呼ばれる木に釘うち等で仕上げる方法を乾式(かんしきこうほう)と呼んでいます。


 一般に水を使う材料では、水分が蒸発した後の塗ったものの収縮によるひび割れがあります。これは、モルタルの宿命ともいうべきもので、ひび割れの発生を少なくする混和剤などもありますが、完全に防ぐことはできません。




 A 重い

 D モルタルが重いのは確かです。

 外壁材として利用されるモルタルの重さは塗り厚さ20ミリで40kg/uとなります。これが外壁に張られたメタルラスに塗り付けられています。

 どの程度重いのかは、下の表でサイディングとの比較をしてみましょう。

住宅の外壁仕上げ材のuあたりの重量の比較
外壁材
形状イメージ
重さ
金属系サイディング 厚さ18ミリ
 6kg/u
窯業系サイディング 厚さ16ミリ
16kg/u
モルタル塗り     厚さ20ミリ
40kg/u

画像出典:上二つは旭トステム外装(株)    一番下日本左官業協同組合連合会


 比較表からも分かるように、モルタル外壁の重さは飛びぬけています。この重さは、三つの中からは地震には最も不利と言えます。


 モルタル塗りの外壁は、クラック(ひび割れ)という宿命を持っています。なぜなら、水を使うとどうしても乾燥した場合、収縮が生じるからです。よく見ないとわからないが、髪の毛の細さほどのクラック(ひび割れ)は新築住宅でもよく見かけます。しかし、この程度なら心配はありません。

 経過を観察して、それがだんだん大きくなるようでしたら、補修が必要になります。補修をしても、また元通りの美しさにもどることはありません(下図の図1参照)。少し色の濃い目の縦縞(たてじま)の部分が補修して同色で塗った後です。同色を塗っても、色合わせを行って塗っても、元の色には戻りません。補修跡を完全に消すにはまた外壁を全面塗装するしかありません。

 図1をみますと、発生している箇所は、柱割のピッチと合致しています。木造の柱割は900o程度なのでその間隔でクラックが発生していることが判ります。




 A 汚れ

 外壁は厳しい風雨に晒され続けている為、次第に空気中の塵や微生物の繁殖で汚れが生じてきます。どんな建物でも、程度こそ違いがあるもののそれは変わりません。モルタルの外壁は、仕上げが一般的に淡色系である場合が多く、汚れが目立ちやすいのです。


 汚れは、だんだんひどくなると、黒くなり見苦しく、古ぼけた感じになります。計画的に、メンテナンスをする必要があります。マンションなどでも外壁を吹き付け直すのはこのためです。タイル張りと比して安価に仕上がりますが、メンテナンスの回数は多くなります(下図の図2)。


          図1

 外壁を下は窯業系サイディング、上はモルタル塗りにした最近の住宅。少し見ずらいのですが、モルタル部の亀裂(クラック)により、補修をした後が縦縞(たてじま)のようについているのが見えています。

 この従来からの塗装とひび割れ補修後に塗った塗装との違いは、年々ひどくなり、見た目に見苦しいものとなっています。


             図2

 モルタル塗り外壁で適切に目地が入れられており、目立つようなひび割れ(クラック)は全く見受けられません。非常に古い建物で外壁も汚れていますが、ひび割れは起きていません。

 もしひび割れが起きていればその割れ目に沿って汚れが出来ているはずだからです。それが、見当たりません。こうした、適切な目地を設けることが、思わない場所に見苦しいひび割れを起こさせないように出来るといえます。




 モルタル塗りの外壁は通常、上にジョリパットの例で示したように塗装で仕上げます。




 ■ モルタル外壁にも適切に目地を設ける

 モルタル外壁はこれまで述べてきたように、ひび割れ(クラック)を大変起こしやすいということやそれを防ぐ方法がほとんどないということがが解りました。そこで、それなら、ひび割れが起きやすい場所に予め目地を設けて、ひび割れが起きるのをその目地に誘導しようではないか、という考えが浮かびます。

 それを今でも行わないのは、少なくとも2回は行う下塗りにあります。まず1回目塗りの後、時間をおいてひび割れを発生させ、2回目も塗った後も同様にしてひび割れを十分に発生させて、仕上げ塗りとなります。すでにひび割れの発生は十分に行われたとしているからです。

 しかし、それでも仕上げ塗りのモルタルにひび割れは当然発生します。

 そこで思いつくのが、ひび割れの「誘発目地」というものです。自然と起きるひび割れを、人間の手で設けた目地にひび割れを起こさせて、起こさせたくない部分には殆ど起こさせないようにしたい、との考えに基ずくものです。この考え方は、鉄筋コンクリート造では、今も盛んに持いられている手法です。


 木造建築は、剛性が乏しく地震や強い風にも相当揺れます。したがってひび割れが起きやすい構造ではありますが、少しでも少なくしたいという考えもあります。


 その例が図2です。開口部の両サイド、その間に1メートル以内の目地を入れています。実に良い例です。ただ、目地を見せたくないという思いがあれば、ひび割れが生じることは致し方ありませんが、目地を入れ、コーキングして、ほかのモルタルの部分と同じように吹き付けをすれば目地は目立たなくなります。







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