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 W-Wallet エキスパンションジョイント(一般部)

1.EXP.J(エキスパンション
 ジョイント)とは

2. EXP.Jが必要な建築物と
  設置部分

3. 隙間(クリアランス)を
  どのように繋ぐか

4. EXP.Jの地震時の動き

5. 隙間(クリアランス)は
  何ミリ必要か


      
 2. EXP.Jが必要な建築物と設置部分

  地震発生時などには、クリアランスを挟んで隣り合う躯体はそれぞれ異なる動き方をします。EXP.Jは、その動きに追従したり、クリアランスに生じる歪みを吸収したりして、建築物全体の機能を維持することを目的としています。

 例えて言えば、鉄道の車両間に設置された連結部分のようなイメージです。(下の画像)




 上の画像では、床の両方が半固定されています。
 前後の車両から伸びた鉄板=チェッカープレートがスライド出来るように重ねられており、しかも電車の動きに対応できるように、掛かり代(重ね代)が設けられています。これにより車間の動きの違いを吸収しています。


 よく見ますと、前後の2車両が上下に違う動きになっても対応できるように鉄板=チェッカープレートの片方の端部が蝶番(ちょうつがい)で2箇所止められています。又、チェッカープレートの端部に角を落として、万が一の場合のチェッカープレート同士の衝突も回避しています。

 また、上の画像で壁部分及び天井部分は「ジャバラ」となっていて、列車間の動きの違いを吸収しています。これにより、建物のEXP.Jよりはるかに大きな連結部の変動を抑えることができます。


 EXP.Jはまさにこの電車の車両同士の連結部と同様の動きをし、建築物の地震時のそれぞれの動きによって、建築物が損壊することを防ぐ仕組みと言えます

 これが理解出来れば、EXP.Jの機能の理解は半分以上出来たと言えるでしょう。



 ■ EXP.Jの働き

 上の画像からわかるように、EXP.Jの働きは、大きく分けると2つあります。

 1つ目は、隙間(クリアランス)を介して建てられる複数の構造躯体を、一体的に利用できる建築空間としてつなぐことです。

 2つ目は、分かれて建つ構造躯体に、それぞれ異なる動きが発生しても、それに追従し、吸収する働きです。躯体の動きには、地震時の変形や、温度変化による伸縮、強風時の動きなどが挙げられます。

 ただし、想定外の揺れなどによって、EXP.Jが破損することがあります。



 ■ EXP.Jはどのような建築物に必要か

 EXP.Jはどのような建築物に設ける必要があるのでしょうか。

 次にそのケースを6つ上げました。例えば、意匠上も建築物の構造上でも、EXP.Jを設けたくはないが、敷地や建築物のプラン、構造上の検討の上、設けざるを得ない場合です。


そうした働きを持つEXP.Jを必要とする建築物は、次の上げるように、大きく3つ(の1〜その3)に分類できます。


    その1 構造特性の異なる躯体をつなぐ @〜E

 1つ目(その1)は、構造的な特性が異なる複数の躯体を一体化する建築物です。

 例えば、階数が極端に違う2棟の一体化、鉄筋コンクリート(RC造)と鉄骨(S)造の躯体の一体化、異なる基礎や杭に載せた躯体の一体化などです。

   @ 振動特性が異なる建築物




 隣接する建築物の高さが極端に異なる。
 A棟 超高層建築物
 B棟 低層建築物

 こうしたケースは、既存の階数の低い建築物に接して高層の建築をする場合などにあり、しかも建築物を共有して使用する場合が考えられる。

   A 構造計算が異なる建築物




 RC造と鉄骨造など、各建築物の構造計算が異なる。
 A棟 RC造
 B棟 鉄骨造

 中層建築物の屋外に接して、鉄骨造避難用の屋外階段を複数を同一場所に集中して設ける物販店舗建築物などが例である。。

   B 基礎が異なる建築物




 同じ程度の規模の建築物であっても、基礎や杭の異なる建物は、振動特性や変異量が異なる。
 A棟 杭基礎など深い基礎
 B棟 耐圧版基礎

 AB棟に建設時期が大きな差があったり、建築基準法の構造設計基準に変化があるなどの場合には基礎が違ってくることもある。


   C 重量配分が異なる建築物




 建築物の主構造の違いなどで重量が異なると、地震時の振動特性や変位量が異なる。

 A棟 RC造
 B棟 鉄骨造

 比較的低層の建築物に隣接して、比較的大規模な鉄骨造の駐車場を設ける大型物販店舗や遊技施設などで見かける。

   D 温度変化の大きい建築物




 鉄骨造など夏冬の温度変化の影響を受けやすい。

 A棟とB棟を繋ぐ渡り廊下などに設ける。
温度変化に依るところもあるがが、渡り廊下は元々EXP.Jを繋ぐ建築物との間には設置する必要がある。

 建築物の利用状況の変化から、両棟間にあとから渡り廊下を設けることになることが多い。

   E 増築する建築物




 増築部の建物は、既存建物と基礎が異なる。
 A棟 RC造や鉄骨造
 B棟 RC造や鉄骨造 増築部分

 AB棟が同じ構造であっても、違う構造であっても増築する場合は、EXP.Jは設ける。又、基礎部分もEXP.Jではないが、完全にエラスタイトなどを挟んで縁切りする。


    その2 複雑な平面形や長大な建築物 @とA

 2つ目(その2)は、複雑な平面形や、平面が長大な建築物のケースです。複雑な平面形の典型例は「L字形」や「コの字形」、「鴈行型(がんこうがた)」が複数ある建築物のケースです。地震時の揺れが複雑になるので、整形な躯体に分けてシンプルな構造とし、それぞれの隙間をEXP.Jでつなぐケースがよく見られます。

 また、平面が長大な建築物は、不均質な地盤や、熱による伸縮を大きく受けやすいので、適切な箇所で躯体を分けるのが一般的な設計方法です。


   @ 平面形状が複雑な建築物




 雁行型などの平面形は、地震時の揺れの方向が複雑になる。

 左の図の建築物ABCは変則的な雁行型。また、変則的ではない雁行型でも同様の扱いである。

 プライバシー保護がし易いため、マンションなどで多く見かける。

   A 長大な建築物




 平面的に長大建築物は、地盤や熱収縮の影響を受けやすい。

 このため本来一つの建築物ではあるが、長大な建築物中央辺りにEXP.Jを設けるものである。

また建築物の長さが60m以上になると、地震や気象による乾燥収縮などで、躯体にひび割れも幅も大きくなるため、EXP.Jの設ける位置として判断も良い。

 設ける位置は、構造設計で指示があるのが一般的。


    その3 急増する免震構造の建築物 @

 3つ目(その3)は免震構造の建築物です。免震構造の建築物の場合は、地震の揺れを減衰する免震装置の部分と、地盤面や非免震部分とが取り合うためEXP.Jが欠かせません。他の建築物と異なり動きが大きくなることから専用のEXP.Jを用います。

 免震EXP.J部分は建築物の揺れに地上面でスライドします。この部分は人車の利用がありますので、強固でなければなりません。


   @ 免震構造の建築物




 免震構造物と地盤面とでは、振動特性や変位量が異なる。建築物と周囲の地盤(コンクリート擁壁が一般的)の間は500o程度の空きを設ける。このための敷地と建築物との余裕が必要となる。

 左の図の建築物から地盤面まで、羽のように伸びた部分が、EXP.Jとなる。従って、羽のような部分は、地盤面に単に接しているだけで、建物取り付け部以外は強固には固定はなされていない。

 過去に免振EXP.Jが上手く作動せず破損する事故があり、新聞でも取り上げられた。




画像出典:トレたび



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