| 屋根勾配とは屋根にとる勾配、あるいは現に取られている勾配のことです。そして、勾配屋根とは、現に勾配の取られている屋根のことです。複雑に聞こえますが、要するに屋根勾配を取った屋根が勾配屋根ということになります。、
どんな建物にも屋根には勾配が付いています。それはビルの屋上においても勾配を設けています。この場合は、一見して勾配があるかどうかわからないほどですが、建築の関係者にはすぐに見分けがつくことです。建築に無関係の人でも、水下には排水溝や排水用のドレンがある事で判断がつきます。
| ここでは、勾配についてわかりやすくするために、一般的な住宅建築の屋根を例に取り上げました。
住宅の屋根は、一部において陸屋根(ろくやね)のものもありますが、後述するビルの屋根と同様にちゃんと勾配が付いています。
屋根に勾配を設ける理由は、水はけをよくするためや積もった雪を落とすため為ですが、屋根のもつ意匠性も重要な要素であり、双方を勘案して決定します。地域の気候の特性なども同時に考慮されるべきことです。
左の図では、屋根の勾配の代表例を示しています。 | 上の図において3寸とは三角形の底辺部が10で、高さが3である場合の斜辺が屋根勾配に相当します。これを『3寸勾配(さんずんこうばい)』と呼びます。他の4寸と記入のある屋根も同様に『4寸勾配(よんすんこうばい)』と呼びます。以下も同様です。
ここでは、3とか4とかといった切りのいい数字の勾配を示していますが、実際には『3寸5分(さんずんごぶ)勾配』や『4寸5分(よんすんごぶ)勾配』といったものもありますし、もっと緩やかな『2寸5分勾配』といったものもあります。
図は、切妻部分の屋根を示していますが、入母屋の屋根や寄棟の屋根でも同様です。
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下の図は、屋根勾配を取った日本建築の代表的な屋根です。殆どの勾配屋根を網羅出来ていると思います。この図は、建物の形がどれにおいても、方形です。これは勾配屋根の形状を説明しやすくした結果であり、実際の建物ではもっと複雑な形状の建物になることが殆どで、それに応じて、屋根にも谷が出来たり小さな山が生じたりしてきます。
欧米では、その土地の気候や意匠好みによる日本建築にはない、斬新な屋根形状もあります。が、基本的な考え方はどの国においても同じです。建築費を気にしないでも良いのなら、そうしたものも良いかも知れません。ただ、屋根が複雑になることは、雨漏りの原因となるリスクは大きくなります。
マンションやビルの屋根で、一見して平(たいら)と思える屋根があります。このような屋根を陸屋根(ろくやね)といいます。すぐ上の図で言えば、一番上の右端に当たります。陸とは水平の意で,ほとんど勾配(こうばい)のない平らな屋根をいいます。
この図は、屋根の形状の説明のために、少し簡略しすぎていいる感がありますが、屋根の端全周に渡り、パラペットというコンクリートの短い立ち上がりがあるのが一般的です。これは、屋根を利用する場合や設備機器などの置物、排水処理などの目的からあった方が都合が良いのです。
こうした陸屋根も実際には勾配を設けています。その主な目的は水勾配のためです。
陸屋根は鉄筋コンクリート造の建物の屋根であるか鉄筋コンクリート造の屋根でであることが殆どです。屋根としては、構造的にもシンプルで、施工しやすく、工事費も安価で済むことから非常に多くの場合で用いられます。
この屋根に落ちた雨水は、当然排水する必要があります。そのため、建物の短辺側に向かって片方から、または、中央から両側に水勾配を取ります。勾配によって集まった端の水は、その際に設けられた排水溝から、ドレーンに集まり外壁から樋を伝って地上に集められます。
短辺方向に向かって水勾配をとるのは、水勾配をとりやすいからで、水上のコンクリートの厚さを薄くすることができ、構造的に有利であり、経済的でもあります。
陸屋根に水勾配を設ける場合、およそ1/50から1/100とします。もっと急な1/20などでもより安全に排水出来ますがそのためには水上のコンクリートを厚くする必要があり、好ましくありません。
陸屋根のスラブ自体を躯体として水上で50mmから100ミリせり上げることも考えられますが、施工が煩雑になり、工事費も上がりますので多くの場合は、この方法は用いられません。
建物が大規模の陸屋根である場合は、中央に梁を設けてスラブを左右に左右に勾配をとることもあります。
陸屋根のドレン部の断面図 画像出典:タジマ
陸屋根の水勾配は殆どの場合で1/100です。これは、水下(みずしも)に集まった水を、そこに設けた溝からドレイン配するするための水勾配をとる必要があるため、1/50の様な勾配をとると、溝の勾配が取り辛くなるためです。
多くの場合、溝の水勾配においても1/100程度を設けます。
1/100という水勾配は、殆ど水が流れないに等しいくらいの勾配で、工事中にこれを取ることは殆ど不可能に近い勾配といえます。スーパーなどの屋上ではあちこちに水だまりが出来ているのを見かけるのはこのためです。
最近は露出防水が多くなり、建物端に排水溝を設けないことも多くなりましたが、基本的には設けることが大切です。
画像出典:勾配屋根の例 JCMA
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