| 開き戸や引き戸には、戸の開き勝手により左右勝手違いに設計されているものがあります。もし、注文時に左右勝手の指示間違えをすると、たいへん厄介なことになりますので十分な確認と注意が必要です。サッシ図を作成するときには、設計図の建具配置図から図面を起こしますが、片開きの場合は、戸が開く方向を必ず下にして、サッシ製作会社は作図します。
作図したものを設計者に確認してもらい、工期の関係から枠の製作を先行して製作に入ります。開き勝手は設計者でさえ間違ってしまうことや施主の意図とは相違があることもしばしばです。
口頭ではなくサッシ図で必ず確認をしておく必要があります。途中で、変更と言い出しても、枠の製作が進んでいると、その分は、損害となります。最終的に誰がそれを負担するのか、紛糾するところです。
サッシ図では、廊下とか便所とかの用途を記入していますので、設計図の建具配置図で容易に確認できます。
開き戸には右勝手(みぎがって)、左勝手(ひだりがって)という言葉があります。あるいは、右吊元(みぎつりもと)、左吊元(ひだりつりもと)などと呼ぶ場合もあります。いずれも、開き勝手を示す言葉です。
一般的には、サッシ図を作成する時には、設計図の建具配置図を元に、サッシ図にも建具配置図を作成します。この場合ほとんどが、設計図の設計データーを転用して、描き写しの時の写し間違えを避けるのが一般的です。
あるいは、設計図の建具配置図を、縮小してサッシ図に貼り付けたりします。建物の平面上に開き状態を図示します。言葉だけでは、間違いが生じる可能性が非常に高いためです。
この勝手呼びはISO規格と日本の慣例の拠るのとがあります。日本の慣例によるものは、サッシ協会の標準となっているものです。基本的には、丁番の見える側に立った人が見て、右側に見えるものを「右勝手」、左側に見えるものを「左勝手」と呼びます。サッシ業者にはこれは共通の事柄です。
しかしながら、ドアクローザー(ドアチェック)やフロアヒンジはこの逆で右勝手の扉に設けるドアクローザーは左勝手と呼びますので注意が必要です。
引き戸は日本特有の建具開閉方式です。これにも、勝手があり、下の図のようになります。収納部が見える側に立っての判断です。
| | 右勝手(片引き戸) | 左勝手(片引き戸) |
下の図のように片引き戸を引いて開けたとき、全部壁と同じだけ戸が引けてしまいますと、指詰めを起こす恐れがあります。特に最近の戸は軽い力で引くことが出来ますから、ついつい戸が思いの他に、大きく開けてしまいます。そうすると指詰めが起こることが多くなります。重い引き戸ならそのようなことはめったにありません。
そこで、引き戸を引いて開けた時、全部開かないように引き残しを設けます。引き残しを設けますと指を詰めるようなことはあり得ません。引き残しは、引き戸に取り付けられた、例えば、襖の引手のような窪んだものでは、特に有効です。
また、パイプ状の取っ手が付いた戸引き戸では、戸より出っ張っていますので、壁に当たって全部は引き込めませんので、計画的に引き残しを取らざるを得ません。
引き残しをつけると、当然ですが、出入り口の有効幅が狭くなりますから、有効幅がいくらと要求されるような場合には、注意が必要です。引き残しの寸法は引手(引く時の金具)の形にもよりますが、100oから120o程度です。下記の図でいえば、「引き残し」の文字の部分の寸法がそれにあたります。
戸を開くときには「内開き」と「外開き」がありますが、どういった基準で決めているのでしょうか。ある部屋から見れば外開きでも、反対側から見れば内開きになります。その決定の仕方とは何でしょうか。
室(建物)の内外で考えると、室(建物)外に開くのを外開き、室(建物)内に開くのを内開きといいます。それ以外は、これまで述べてきた様に、丁番が見える位置から右左の勝手を考えるのに変更はありません。(下図中、「丁番が室外」「丁番が室外」とあるのは丁番が見える側の意味です)
| | 外開き(右勝手)丁番が室外 | 外開き(左勝手)丁番が室外 | | | 内開き(右勝手)丁番が室内 | 内開き(左勝手)丁番が室内 |
引き違い戸では図1のように向かって右側の戸が手前に来る「右前(みぎまえ)」が原則です。日本では、逆にすることは、図2のように「左前(ひだりまえ)」といって忌み嫌うことになるのです。着物でも左前になる時は、死んだ人が着る図3のように「死に装束(しにしょうぞく)」の場合のみです。
極めてまれに、若い元気な人が、左前で着物を着ているのを見ることがあります。これは、洋服が女性の場合は、向かって左前に出来ているせいなのでしょう。同情を禁じえません。
また、会社が、倒産したりすることを「会社が左前(ひだいまえ)になった」などといいます。これも、会社の倒産が潰れること、死を意味することからそういう言葉が使われるようになったと推測されます。
| | 図1 (正) 戸が向かって右が手前に来る | | 図2 (誤) 戸が向かって左が手前に来る | 図3 死んだ人の着る「死に装束」は向かって左が前にきます。
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もっともサッシメーカーでも、この原則をあっさりと反故(ほご)にしているのを見かけますし、四枚引違などの襖(ふすま)では四枚分の敷居を作ることもできませんから、どうしても半分の2枚は図2のようになってしまいます。致し方ありません。それでも、二枚の引違では、この原則は絶対に守ってほしいものです。
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