化学物質名 |
物質の特性と発散と拡散
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ホルムアルデヒ
ド
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ホルムアルデヒドは無色で刺激臭を有し、常温ではガ
スとして存在します。水によく溶け、35〜37%の水溶液
はホルマリンとして知られています。室内空気汚染の主
な原因として推定されるのは、合板や内装材等の接着剤
からの放散及びこれらを使用した家具類(木製家具、壁
紙、カーペット等)からの放散です。また、喫煙や石油
やガスを用いた暖房器具の使用によっても発生する可能
性があります。 人に対する健康影響は、0.08ppmあたり
から臭いを感じ、0.4ppmあたりから目の刺激を感じると
されています。さらに0.5ppmあたりから喉の炎症を、
3ppmでは目や鼻に刺激が、4〜5ppmでは流涙し呼吸器に不
快感が生じ、31ppmあたりで重篤な症状が起こり、104ppm
あたりでは死亡すると言われています。なお、IARCでは
「ヒトに対し恐らく発がん性がある(2A)」と分類されて
いますが、その作用機序からある一定以上の暴露がなけ
れば発がんは起こらない(閾値がある)ものとされていま
す。
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トルエン
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トルエンは無色でベンゼンのような芳香をもち、揮発
性は高いですが、常温では可燃性の液体です。空気より
重く高濃度の蒸気は低部に滞留する性質があると考えら
れていますが、通常は対流により拡散し、空気との混合
気体は相対的に空気と同じ密度になると考えられていま
す。室内空気汚染の主な原因として推定されるのは、ホ
ルムアルデヒドと同様に、内装材等の施工用接着剤、塗
料等からの放散及びこれらを使用した家具類からの放散
です。人に対する健康影響は、480ppbあたりから臭いを
感じ、高濃度の短期暴露で目や気道に刺激があり、精神
錯乱、疲労、吐き気等、中枢神経系に影響を与えること
があるとされています。また、比較的高濃度の長期暴露
により、頭痛、疲労、脱力感等の神経症状へ影響を与え
ることがあり、心臓に影響を与え不整脈を起こすことが
あるとされています。
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パラジクロロ
ベンゼン
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キシレンは無色でベンゼンのような芳香を持ち、揮発性
は高いですが、常温では可燃性の液体です。空気より重
く高濃度の蒸気は低部に滞留する性質があると考えられ
ていますが、通常は対流により拡散し、空気との混合気
体は相対的に空気と同じ密度になると考えられていま
す。室内空気汚染の主な原因として推定されるのは、ホ
ルムアルデヒドと同様に、内装材等の施工用接着剤、塗
料等からの放散及びこれらを使用した家具類からの放散
です。人に対する健康影響は、高濃度の短期暴露ではト
ルエンと類似しており、のどや目を刺激し、頭痛、疲
労、精神錯乱を起こすことがあるとされています。 ま
た、比較的高濃度の長期暴露により頭痛、不眠症、興奮
等の神経症状へ影響を与えることがあるといわれていま
す。
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ベンゼン
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パラジクロルベンゼンは通常、無色又は白色の結晶で
特有の刺激臭を有し、常温で昇華します。空気より重く
蒸気は低部に滞留する性質があると考えられています
が、通常は対流により拡散し、空気との混合気体は相対
的に空気と同じ密度になると考えられています。家庭内
では衣類の防虫剤やトイレの芳香剤等として使用されて
います。健康影響では、15〜30ppmで臭気を感じ、80〜
160ppmでは大部分の人が目や鼻に痛みを感じるとされ、
肝臓及び腎臓に影響を与え、機能低下及び損傷を生じる
ことがあるとされています。 また、比較的高濃度の長
期暴露により、肝臓、腎臓、肺、メトヘモグロビン形成
に影響を与えることがあるとされています。
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エチルベンゼン
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エチルベンゼンは無色で特有の芳香を持ち、揮発性は
高いですが、常温では可燃性の液体です。空気より重く
低部に滞留する性質があると考えられますが、通常は対
流により拡散し、空気との混合気体は相対的に空気と同
じ密度になると思われます。 接着剤や塗料の溶剤及び希
釈剤等として、また燃料油に混和して、通常は他の溶剤
と混合して用いられています。室内空気汚染の主な原因
として推定されるのは、合板や内装材等の接着剤、塗料
等からの放散及びこれらを使用した家具類からの放散で
す。 健康影響は、10ppm以下でも臭いは感知できるとい
われており、短期暴露では、蒸気がのどや目に刺激があ
るとされています。また、数千ppmといったかなりの高濃
度になると、目眩や意識低下等の中枢神経系に影響があ
るとされ、長期間皮膚に接触すると皮膚炎を起こすこと
があるとされています。
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スチレン
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スチレンは無色ないし黄色を帯びた特徴的な臭気があ
り、揮発性は高いですが、常温では油状の液体です。空
気より重く、高濃度の蒸気は低部に滞留する性質があり
ますが、通常は対流により拡散し、空気との混合気体は
相対的に空気と同じ密度になると考えられています。 ポ
リスチレン樹脂、合成ゴム、不飽和ポリエステル樹脂、
ABS樹脂、イオン交換樹脂、合成樹脂塗料等に含まれ
る高分子化合物の原料として用いられており、これらの
樹脂を使用している断熱材、浴室ユニット、畳心材等の
他様々な家具、包装材等)に未反応のモノマーが残留して
いた場合に室内空気中に揮散する可能性があるとされて
います。 健康影響は、60ppm程度で臭気を感じはじめ、
200ppmを超えると強く不快な臭いに感じるとされ、
600ppm程度で目や鼻に刺激、800ppm程度になると目や喉
に強い刺激を感じ、眠気や脱力感を感じるようになると
いわれています。また、比較的高濃度の長期暴露によ
り、肺や中枢神経系に影響を与え、眠気や目眩を生じる
ことがあるとされています。
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クロルピリホス
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クロルピリホスは無色の結晶です。揮発性はかなり低
く、空気より重い性質があります。残効性がある有機リ
ン系の殺虫剤で、家庭内では防蟻剤として使用されてい
ます。健康影響は軽症の中毒時の症状として、倦怠感、
違和感、頭痛、めまい、胸部圧迫感、不安感および軽度
の運動失調等の非特異的症状、吐き気、嘔吐、唾液分泌
過多、多量の発汗、下痢、腹痛、軽い縮瞳があるとさ
れ、重症の急性中毒の場合、縮瞳、意識混濁、けいれん
等の神経障害を起こすとされています。
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フタル酸ジ-n-ブ
チル
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フタル酸ジ-n-ブチルは無色〜微黄色の特徴的な臭気が
あり、揮発性は高いですが、常温では粘ちょう性の液体
です。空気より重く、高濃度の蒸気は低部に滞留する性
質がありますが、対流等により拡散した空気との混合気
体は相対的に空気と同じ密度になると考えられていま
す。家庭内では主に塗料、顔料や接着剤に、加工性や可
塑化効率の向上のために使用されています。健康影響
は、高濃度の短期暴露で、目、皮膚、気道に刺激を与え
ることがあるとされ、誤飲により吐き気、目眩、目の痛
み、流涙、結膜炎が見られたという報告があります。長
期暴露の影響ははっきりしていません。
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テトラデカン
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テトラデカンは石油臭のある常温では基本的に無色透
明な液体です。凝固点が6℃弱であるため、冬季には固化
する可能性があります。揮発性は他の溶剤に比べると低
いです。蒸気は空気より重く、高密度の場合は低部に滞
留する性質がありますが、対流等により拡散した空気と
の混合気体は相対的に空気と同じ密度になると考えられ
ています。工業的に灯油留分をさらに精製して生産され
ており、従って灯油は主要な発生源になり得ます。ま
た、塗料等の溶剤に使用されることがあります。健康影
響は、中毒の情報はあまりないですが、高濃度では刺激
性で麻酔作用があるとされています。皮膚に直接ついた
場合、皮膚の乾燥、角化、亀裂を生じることがあり、衣
服についてそれが長時間皮膚に接触したような場合には
接触性皮膚炎を起こすことがあるとされています。
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フタル酸ジ-2-エ
チルヘキシル
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フタル酸ジ-2-エチルヘキシルは無色〜淡色の特徴的な
臭気がある常温では粘ちょう性の液体です。空気よりか
なり重く、常温ではほとんど揮発しないという性質を有
しています。用途は、代表的な可塑剤として、壁紙、床
材、各種フィルム、電線被覆等様々な形で汎用されてい
ます。 健康影響は、工場等における事故的な高濃度の短
期暴露で、目、皮膚、気道に刺激を与えることがあり、
また、消化管に影響を与えることがあるとされていま
す。反復または長期間の接触により皮膚炎を起こすこと
があるともされています。
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ダイアジノン
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ダイアジノンは弱いエステル臭を持つ無色の常温で、
やや粘ちょう性の液体です。空気より重く、揮発性は低
いという性質を有しています。家庭では有機リン系の殺
虫剤の有効成分として用いられています。健康影響で
は、クロルピリホスと同様の中毒症状を示すとされてい
ます。
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アセトアルデヒ
ド
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アセトアルデヒドは無色の液体で刺激臭があり、薄い
溶液では果実様の芳香があります。揮発性は高く空気よ
り重いという性質を有します。エタノールの酸化により
生成され、ヒト及び高等植物における中間代謝物でもあ
るため、様々な食物やアルコールを含むもの、またヒト
そのものも発生源になり得るとされ、いわゆる二日酔い
の原因物質の一つとしても知られている。また、喫煙に
より発生することも知られている。用途は、ホルムアル
デヒド同様一部の接着剤や防腐剤に使用されている他、
写真現像用の薬品としても使用されています。健康影響
では、蒸気は目、鼻、のどに刺激があり、目に侵入する
と結膜炎や目のかすみを起こすとされています。長期間
の直接接触により発赤、皮膚炎を起こすことがあり、高
濃度蒸気の吸入による中毒症状として、麻酔作用、意識
混濁、気管支炎、肺浮腫等があり、初期症状は慢性アル
コール中毒に似ているとされています。
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フェノブカルブ
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フェノブカルブの純品は無色の結晶でわずかな芳香臭
があります。揮発性は低くその蒸気は空気より重いとい
う性質を有しています。カーバーメート系の殺虫剤であ
り、水稲、野菜などの害虫駆除に用いらていますが、家
庭内では防蟻剤として用いられています。健康影響は、
高濃度蒸気や粉塵の吸入による中毒症状として、倦怠
感、頭痛、めまい、悪心、嘔吐、腹痛などを起こし、重
症の場合は縮瞳、意識混濁等を起こすとされています。
また、皮膚に付着すると、紅斑、浮腫を起こすことがあ
ります。
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