| 基材である合板の表面に印刷技術によって自然に見るような美しい木目や色柄を再現した紙の化粧シートを貼り合わせた建材製品がプリント合板です。
用途に応じて合板だけでなく、前ページで取り上げたMDFやパーティクルボードを基材とした製品もあります。また、紙だけでなく樹脂シートなどを張り付けたものもあります。
プリント合板の工程は大まかに説明すれば次のようになります。
@ 基材である合板の表面を磨きます。 A 接着剤と塗布します。 B 木目を印刷紙をしたプレコート印刷紙や アフターコート紙を貼り付けます。 C 熱圧縮ののち、樹脂塗装を行います。 D 乾燥・検査を行い製品が完成します。
Bのプレコート印刷紙とはプ表面保護の樹脂塗装が施された印刷紙のことです。また、アフターコート印刷紙とは樹脂塗装のない印刷紙(化粧板の製造段階で塗装を施します)
どんなものにも長短があるのは当然です。長所を活かした使い方を心がけ、短所をカバーした使い方が必要です。
プリント合板の長所 | @ | 使われる場所によって好みのデ ザイン(木目調、抽象柄)が自由 に選べる。デザインも豊富。 |  | A | 経済的で使い勝手に優れている。 | B | 表面保護のための仕上げ塗装が 施されているため、手入れが簡 単。 | C | 日曜大工の材料として家庭用工 具で手軽に施工できる。 | D | プリント合板といえば、木目のあるものや抽象的な模様のイメージはありますが、単色もバリエーションとして幅広く生産されている。身近なところでは、手軽な本棚などがある。 | | |
プリント合板の短所 | @ | 印刷したものなので、よく見れば素材感がない。 | A | 紙を貼り付けているのでだけなので、表面が剥(は)がれやすい。 | B | 摩耗するところでは使いにくい。長く使っていると、表面の塗装が擦り切れて地が見えてしまうので、こうしたところへの使用は控え目にする。 | C | 重厚さがなく、安っぽく見える。 | | |
■プリント合板の歴史
当初はグラビアオフセット印刷機(注1)により合板に直接印刷を施したダイレクト方式によるプリント合板として誕生しました。その後、昭和30年代後半に高性能の合成樹脂や接着剤、原紙の開発に加えて高度の印刷技術の発達により、現在の印刷化粧紙を合板に貼り合せたラミネート方式によるプリント合板が開発されました。
ラミネート方式によるプリント合板は、ダイレクト方式と較べ、安定した色調と印刷の繊細な表現に優れるとともに、課題とされていた表面の干割れ(ひわ)の問題を解決しました。また工程の短縮と小ロットから大量生産まで幅広い需要への対応を可能とし、高度経済成長期には折からの建築ブームもあって長足の進歩を遂げ、特殊合板の主流をなすようになりました。
最近では、調湿性能や防湿性能、抗菌性能などを備えた化粧シートやホルマリンを分解する樹脂などが開発され、様々なニーズと生活環境に対応した機能性のある商品が誕生しています
(注1)エッチングなどで形成された凹溝にインクなどを充てんし、ブランケット胴へ移行させたパターンを印刷基材に転写する技術。
■JAS(日本農林規格)では特殊加工化粧合板を次のように定義
『合板のうち、コンクリート型枠用合板、化粧ばり構造用合板及び天然木化粧合板以外の合板で表面又は表裏面にオーバーレイ、プリント、塗装等の加工を施したもの(側面加工を施したものを含む。)をいう。』
というふうに定義されています。
下表のF〜SWは右の図の「タイプ別」の部分に記載されます。これに見合った使用場所に適したものかを確認してから買ったり、使うようにしましょう。
| JAS(日本農林規格)の特殊加工化粧合板の分類 | F | テーブルトップ、カウンターなどの高度の耐久性が 必要な部分に使用可能な品質を有しているもの |  | FW | 建築物の耐久壁面、家具などの通常の温度・湿度 の変化、衝撃性、摩耗性などに優れた品質を有し ているもの | W | 建築物の一般壁面や家具、建具など通常の使用 に耐えうる品質を有しているもの | SW | あまり耐久性を必要としない建築物の特殊壁面や 直接手に触れることのない天井などで使用可能な 品質を有しているもの | | | |
上記表において記号の意味は次のようになります。 F:(flat)天板など。 FW:(flat and wall)天板や壁面など。 W:(wall)壁面 SW:(special wall)特殊な壁面
■プリント合板の仲間たち
プリント合板の仲間として「オレフィン化粧合板」、「塩化ビニール合板」、「ポリエステル化粧合板」や「高圧メラミン化粧合板」などがあります。基台の合板に貼る表面仕上げ材には、オレフィンシートや塩化ビニールシートを貼り付けたものは、エンボス加工(凹凸の加工)があり、精工に出来ていて一見しただけでは天然木と見分けがつかないほどです。
しかしながら、これらは、太陽光が当たる窓サッシの額縁廻りなどの使用では、10年を超えた辺りから、劣化が始り、放置しておくと割れが発生します。やがて、かしこにめくれが出てきますので、利用には対策も考えておく必要があります。
@ オレフィン化粧合板 | 
一例:イタリアンウォルナット | 基材の合板にポリエチレン、ポリプロピレンからで きた樹脂シートを貼り付けたもの。燃焼時にも有毒 ガスをほとんど発生しません。
豊富な色柄があり、耐汚染性、耐水性に優れるた め、扉やキャビネットなど家具では様々な部位で使 用されます。
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A 塩化ビニール合板 | 
一例:チーク柾目 | 基材の合板に塩化ビニールシートを貼り付けたも の。耐汚染性、耐候性、耐水性に優れた化粧材とい えます。
木目柄をはじめ、抽象柄や石目柄、単色までバリ エーションも豊富です。表面仕上げはフラットタイプ とエンボスタイプがあります。塩ビシートは三次元加 工もできる加工性に富んだシートです。 | 家具、什器、建具、腰壁などに使用されます。 |
B ポリエステル化粧合板 | 
| 基材の合板に化粧紙を貼り、ポリエ ステル樹脂を塗布して硬化させたも の。ある程度の硬度があり、耐水性、 耐薬品性も備えます。
豊富な色柄があり、比較的安価なた め、家具としては最も多く使用される化 粧板です。
| 耐摩耗性には劣るため、通常、カウンターには使用せず、扉やキャビネットとして使用されます。 |
C 低圧メラミン化粧合板 | 
一例:アッシュ | 基材の合板に化粧紙(チタン紙)にメラミン樹脂を 含浸させた化粧層と、基材である繊維板(パーティク ルボードやMDF)とを、低圧でプレス成型した化粧板 です。表面硬度が高く、耐汚染性、耐磨耗性、耐熱 性、耐水性に優れた高機能な化粧材といえます。
木目柄をはじめ、抽象柄や単色までバリエーショ ンも豊富です。表面仕上げはフラットタイプとエンボ スタイプがあります。
| 天板、カウンター、家具、什器などに使用されます。 |
D 高圧メラミン化粧合板 | 
一例:アッシュ | 基材の合板に化粧紙(チタン紙)にメラミン樹脂を 含浸させた化粧層と、クラフト紙にフェノール樹脂を 含浸させたコアー層を積層し出来たフェノールバッカ ーとを、高圧でプレス成型した化粧板です。
色柄も豊富なため、カウンターや扉に使用されま す。近年はキッチン扉の大半で使用されています。 ポリエステル化粧板やオレフィンシート化粧板に比 べて高価になります。表面仕上げはフラットタイプと エンボスタイプがあります。
| 天板、カウンター、家具、什器などに使用されます。 |
プリント合板の仲間たちの記事中で@BCの画像はオーダー家具専門会社 ジールワークスによりました。
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