| 前ページで取り上げました、建築基準法と建築基準法施行令の内容は、前ページの表にまとめたております。具体的な規制は、その地方公共団体が決定することになりますので、基準法はその全体の枠組みを示しているに過ぎません。これも前ページ冒頭でも書きましたが、日本は南北に長い国ですので、日影に関してひとくくりには規制出来ないという都合があるからです。 (なお地方公共団体とは、法令上、都道府県と市町村を指します)
規制の対象区域と規制時間は地方公共団体の条例で指定します。また、市町村と都道府県で同一地域に対し異なる制限内容を持つ条例がある場合は、厳しい規制が適用されます。
| | 規制される日影は、一年のうちで影の長くなる冬至の真太陽時の午前8時から午後4時までの日影です。真太陽時とは、太陽が真南にきた時(南中時刻といいます)を12時とするものです。
左図のように、一般にいう中央標準時(兵庫県明石市の南中時刻を12時とする時刻法であり、いわゆる時計の時刻)とはズレが生じます。
東京の南中時刻は、明石市より約20分早くなります。このように地域によってズレが生じるため、地方公共団体が、主体となるのが合理的といえます。
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日影を測定する高さについては、この規制では実際の地面にできる日影ではなく、地面より高い所を想定してそこの日影を規制します。第一種・第二種低層住居専用地域では平均地盤面より1.5メートル、その他の地域では平均地盤面より4メートル又は、6.5メートル高い所です。
日影規制は、二段階の規制になっています。まず5メートルの範囲で建築物が直接隣地に及ぼす影響を規制し、10メートルの範囲でこれを超えて広がる日影や隣地の建築物などの日影による影響を規制しています。
そこで建築物がつくる日影を時間で表し、規制範囲内で規制値以内に日影をおさえます。
例えば、5bラインでは5b範囲内で許されるラインの一番外側だということでです。 | | 5bはその内側の規制を含みます。これを超えてはならないということです。
日影図とは各時間ごとの影を描いたものです。これを「時間日影図」といいます。図では、8時から16時までを、その各時間丁度の日影図を描いたものです。時間ごとに影の形が移り変わっていくのがわかります。
この日影図をもとに同じ時間だけ日影になる点を結んだものを「等時間日影図」といいます。例えば図1の中のA点からE点までを線で結ぶと、8時から16時の間で4時間だけ陽射しがある部分です。図2は同様に作図したものです。
建物側へ行くに従って、5時間の日影→6時間の日影→7時間の日影→黄色塗りの8時間の日影とだんだん、悪くなっていきます。その内、黄色く塗った部分は、8時から16時までの間に一度も陽射しが無い部分です。逆に建物から離れるに従って一日における日影の時間は少なくなります。
日影規制が規制値以内にあるかの判断は「時間日影図」、「等時間日影図」をもとに判断します。例えば規制値が、3時間・2時間と指定されている場合、3時間日影が5メートル範囲を、2時間日影が10メートル範囲を超えてはいけません。
図1
注)作図線が重なって変形し たように見ますが、建物は四 角形です。 | | 図2
注)作図線が重なって変形したように見ますが、建物は四角形です。 | |
このような図はパソコンソフトが一般的になる前は、手書き図面を作成していました。時間日影図の作図そのものに苦労したほか、等時間日影図には泣かされたものでした。
しかし、パソコンソフトが一般的で、手書きの図面がCADに代わった現在では、数値入力さえ間違いがなければ、後はCADソフトの派生ソフトが自動的に瞬時に作図してくれる様になりました。精度も向上して、日影時間が何時間何分何秒まで出すことが出来ます。また、日影の任意の地点での日影時間も表示が可能です。
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