| 建物を建てる場合、役所に建物の確認申請書を提出します。これが下りなければ、建物を建てることは出来ません。また、確認申請書には、さまざまな規制や合議が必要で、提出した役所単独の判断で降りるようなものは、殆どありません。複雑な権利や利害が絡んでいるからです。
この確認申請を提出する時に、日影規制に該当する建物である場合は、日影規制の書類も添付します。建物自体に建築基準法などの関連法令が問題なくても、日影規制による近隣との説明や合意がなされないと、建築確認は下りないのが一般的です。そうでなければ、役所が批判を受けることになるからです。
建築主側(建築主、設計事務所や建築会社)は早急にこの事態を解決しなければなりません。早くしなければならないのは、近隣への説明会です。しかし、この説明会は、大抵の場合紛糾します。なかなかすんなりと解決することはありません。
本来は建築主と近隣住民との2者間で解決にあたるのが道筋ではあります。そこで、役所などが解決に向けて両者の間に入って、解決を図ろうとするところもあります。もし、そうしたことが可能なら、こじれる前に公的な機関に調停を利用するのも手であろうかと思います。
今回は、その一例として「東京都市整備局」のホームページを上げました。これはあくまで一例であり、日影規制は地方公共団体(都道府県および市町村)の関わりが深いものなので、全国で対応は一様ではありませんので、留意ください。上記をクリックして「東京都都市整備局」のホームページを参照していただいた方が文字も大きくみやすのですが、一応、縮小版を改変せずに、ままの形で載せました。参考にして見てください。
「東京都都市整備局」はいわゆる役所ですので、金銭での問題解決の方向に調停が進むと調停からは外れます。また、調停が失敗に終わった場合、近隣住民がそれ以上のこと(例えば、裁判)などへと進むかにも関知しません。
建築主側には、建物を日影規制そのものにも、建築基準法などの手続き上にも不備がなく、残るは日影規制の近隣住民との合意のみである場合、建てる権利はあります。近隣住民側には、建築しようとする隣接地などには、一日のうちに日影時間が長時間になる場合は、許諾し難いのも道理です。また、日影規制とは別に、日照権の主張もあります。
しかし、結局のところ、裁判となっても、建築主側に法的に瑕疵(かし)がないなら、金銭による解決しかありません。結局ははやく言えばお金です。わたしは、これまで何度となく近隣住民との話し合いに参加しましたが、合意はそれでした。ここのところをよく検討して判断してください。
中高層建築物に関する紛争の予防と調整と題し紛争の解決のフロー(流れ)も示しています
なお、因みにいえば、私のこれまでの経験では、建築主が個人の場合(個人経営の会社も含めて)、その人が住む土地に日影規制にかかるような建物を建てる場合には、普段のその人の近隣との付き合いの良し悪しが説明会で明確になります。良い付き合いをしていた人は、全面的に友好的ではないものの、絶対反対などの強硬な意見が少なく、割と穏やかに説明会が進行し、合意などが成立します。
それが、そうではない場合、説明会は開始から大荒れで、5階建ての賃貸マンションでしたが、「2階建てにしろ」とか「半分の大きさにしろ」とか私怨(しおん=個人的な恨み)が一挙に吹き出した事がありました。建築主は、染色業者が廃業して広大な土地にマンションを建てようとしたものでした。
こうなると、建築主自体の問題であり、我々のような設計業者や施工業者が、口を挟めない状況で、まずは建築主の謝罪などを行ってもらわなければ、肝心の日影の説明も始められないということになりました。日頃の付き合い方や行いも、お金と土地持ちの方には特に大事です。
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