| 畳床(たたみどこ)とは、畳の芯となる部分のことで、わらを重ねて麻糸で締めたもののことです。 更にいえば、よく乾燥した稲わらを縦横約1m×2m前後で、厚さ5cm程度にして麻糸で縫い固めたものです。これは伝統的な畳の畳床の構成です。
この畳床(たたみどこ)の表面に、藺草(イグサ)を木綿糸で編んだ畳表を麻糸を使って端部で縫い付け、縫目を布縁(へり)で覆って畳の完成です。
薄板を張った床板(粗板といいます)上に、部屋の大きさに合わせて何枚も敷き詰めれば畳敷きの部屋になります。すなわち和室の畳床の完成です。
現在の日本における畳の構造を見ますと、下記の3つのうちのいずれかになります。この分類方法はJAS(日本工業規格)によるものです。
@ 稲藁畳床(いなわらたたみどこ) | 稲藁を材料として構成したもの
藁(わら)は昔から畳の基材として使用されてきた素材です。基材として何層にも藁を重ねていきます。品質は藁の質や配列、圧縮が均等かどうか、あるいは縫われている風合いなどで決まります。
藁を4cmほどに積み重ねていき、厚さをわずか5cmまで圧縮します。使用 |
| した藁はこの時、30sを超えています。これが右の画像のようなものです。
この段階では、まだイグサを編んだ畳表(たたみおもて)は取り付けられていません。畳が長持ちすることや柔軟性、断熱性や温度を一定に保つ効果、湿気を吸放湿する作用、畳が燃えづらいという様々な点を見ても、この藁床の畳は色々な畳床の中でも最も優れています。ただ、あげて干したり、動かしたりする場合、重いのが難点です。私が子供の頃は、この畳で湿気を多分に含んだ畳を、畳干しのために運ぶ時には、手の平が痛くなって苦労したものです。 |
A タタミボード サンドイッチ稲藁畳床 | タタミボードを芯材とし、上下を稲わらで構成したもの
上下を稲わらで構成したものの間に、ポリスチレンフォームとインシュレーションボードという細かく砕かれたチップを圧縮したもので挟み込んだ畳床です。
軽い上にコストもかからず、高い建物や(マンションなど)アパートによく使われています。断熱性があり、水を吸収せずダニも発生しません。 | 例:ダイケン畳床U型 (サンドイッチタイプ)汎用品 |
また、コンクリートの床に使用する場合は、コンクリートに奪われる熱のエネルギーロスが少量で済みます。
B ポリスチレンフォーム サンドイッチ稲藁畳床 | ポリスチレンフォーム板を芯材とし、上下を稲わらで構成したもの
現在では、「スタイロ畳」と呼ばれる右の図のような構成の畳が一般的です。このスタイロ畳のスタイロの呼称はダウ化工という企業のトレードマークです。
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| ダウ化工自身も当然ながらスタイロ畳を生産しています。スタイロフォームは商品名で、ポリスチレンフォーム製品です。同社の製品は薄い青色をしています。
その他にも、2企業が同様の製品を生産していますがそれらをすべて含めて、畳の材料として使用する場合は、スタイロ畳と通称で呼ばれれています。 |
| スタイロ畳は商品によってはスタイロ部分が殆どを占めるような製品もあります(左の図)。反対にスタイロの厚みを極力押さえた製品もあります。ダウ化工の既製品は木造住宅など、900o前後の柱割りが定まっているものには問題なく納まります。
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しかし、マンションやホテル・旅館などの一定の寸法でない木造以外の建物の室や特別な形状の室、たとえば柱が部屋に張り出していたり、既製品の寸法では収まらない寸法の室である場合が殆どです。
こうした場合は、畳の専門業者が部屋の寸法をとって、それに見合った畳の製作を行い、納品します。逆にスタイロ畳の既製品を使うとするなら、室のサイズを設計の段階から合せて決定しておかねばなりません。しかし、実際にはそのようなことは、建物構造や仕上げの関係からして、不経済的ですので、行われません。
なお、現在においては、スタイロ畳ではなく、伝統的な冒頭のに書いた『稲わら畳床」の畳を製作しているところは非常に少なくなっています。したがって、特別注文となり高価になりやすく、まめに換気や日干しを行わないとカビが生えたりします。
この現象は、古い日本の家屋は、気密性が低く、自然と換気が行われている状態でしたが、現在の住宅は気密性が非常に高くなったことに起因するものです。
畳は畳表を加えて出来上がると、厚さが5.5p程度になります。したがって畳の下の床板(粗板といいます)は畳の厚さ分低い位置にあります。畳の敷いた和室と、フローリングなどの板の間とは100〜150o程度の段差を設けるのが、一般的でした。
1990年ころよりバリアフリーが叫ばれるようになり、次第にこの差がなくなりはじめ、最近の住宅では板間や畳の間の高低差のないバリアフリーとなっています。
次にスタイロ畳の長短所を上げてみました。
スタイロ畳の長所 | @ | 優れた断熱性・保温性・防湿性を発揮する。 | A | ダニ等の発生を抑制するので、衛生的に使用することができる。 | B | 従来の畳に比べて軽量なので、大掃除等の移動も簡単。 | | |
スタイロ畳の短所 | @ | 吸湿性に劣るため、夏のようなジメッとした時にサラッとした清涼感がない。 | A | わら畳より寿命が短い | B | 燃やすとダイオキシンが発生するので、廃棄処分に手間がかかる | C | 化学物質過敏症の要因になりうる | D | 重厚さがなく、安っぽく感じる。 | | |
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