| | 日本の木造建築では「総ヒノキ作り」などというと、昔から高級建築の異名があります。 真直ぐで大材が得られ、しかも強度がありながら、見た目に美しいヒノキは社寺建築や、武家屋敷の高級建築の構造材に多用された日本を代表する良質の木材です。
一方、スギは日本人にとって最も馴染み深い樹木です。檜に比べて人目に着かない、構造材などに間柱や筋交いなどに多用されています。
最近では、これらの枝打ちなどの手入れが充分になされないために、必要以上に花粉が飛散して鼻炎などを引き起こし、すっかり悪玉になりました。
| 日本を代表する木材コンビ |
その檜と松の両者の何処に相違があるのでしょうか。下表に相違点を挙げてみました。
檜と杉の相違点 | | 檜(ヒノキ) | 杉(スギ) | 種類 | 針葉樹(日本固有の針葉樹) | 針葉樹 | 特徴 | スギに比べて年輪がはっきりしない。薄いピンク色から肌色をしていて、材色と芳香に優れています。ヒバやネズコの葉と酷似しており判別しにくいが、檜が一番葉の形状がすっきりとシンプル。 | 春材の淡い色と、秋材の濃い色が交互に出ていて、年輪がはっきりしています。調湿作用や殺菌作用に優れています。松の枝とよく似ており、判別しにくいが、松は枝が茶色いが、杉は葉と同じグリーン色。 | | | | | 材質 | スギに比べて固い | ヒノキに比べて柔かい | 用途 | 構造材としても、また、湿気やシロアリに対してもスギよりすぐれています。構造材として用途はもちろん、あらゆる部材に用いられる。
檜の皮を用いて葺いた屋根のことを「檜皮葺(ひわだぶき)」は世界に類を見ない日本独自の屋根葺き工法です。出雲大社や京都御所紫宸殿などが代表例です。
| スギは、植林数が多く、安価であるので、現在では、構造材として、柱や梁床組み、間柱、筋かいなどに使われています。
杉の皮は、木造の建物の外壁に葺かれるほか、「杉皮葺き(すぎかわぶき)」など屋根葺き材に用いられます。杉皮垣として垣根や目隠しとして利用されます。
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檜や杉にも劣らないくらい有名なのは松です。松も針葉樹です。葉は杉に似ており、見間違いしそうですが、杉は針のような葉がついている枝は、葉と同じ深緑色をしています。
松の枝は、幹と同じ茶色です。また、松は松ぼっくりが枝に着いていたり落ちていたりしますので、それだけでも見分けがつきます。また、幹は杉のように真っすぐに伸びません。断面は、杉に似て年輪が明確にでます。
古来より日本では、神のよる神聖な木、節操・長寿を象徴する木と尊ばれ、門松の風習があります。また松竹梅の筆頭とされます。 | | 松の枝 |
松は、真っすぐには伸びず、我が道を行くといった風情や長寿で800年程度とされておりそれが、媚びを売らないで辛抱強く長く待つから、「松=待つ」に結び付いたといわれています。
普段の生活で松を思い浮かべるのは、マッタケ(赤松にのみ出る)や松ぼっくり、海辺の松林、盆栽でしょうか。また、松のつく苗字(みょうじ)や氏名も多いですね。
日本では、有名な松ですが、檜や杉に比べて、なぜあまり建物に使われないのか?強度は、檜と杉の中間くらいとあるのですが、材に狂いが生じやすく、曲がりが強く加工・利用し辛いからです。
また、伐採時期が限られていることも原因の一つです。松は檜や杉のように空に向かって真っすぐに素直に伸びることは、たとえ平地であっても殆どありません。従って、建築材としては、構造材としての小屋梁や床柱などに使われますが、仕上げ材として人の目に着くところには利用できません。
しかし、建築以外の分野では利用価値が大きく、松明(たいまつ)をはじめとする燃料。そこから出る煤(すす)つくられる墨汁、見た目が絵になることから、盆栽をはじめとする観賞用、水に強く腐りにくいことから木杭、燃えやすいことからマッチの軸などがあります。
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