| 5. 木の「反り(そり)」と「割れ(われ)」について |
「木が反る」という言葉には、二つ意味と原因があります。
@ 一つ目は、木が生えている時の急勾配な土地などの条件で、倒れまいとする木の内部応力にによって、製材時に内部の応力が出てしまう場合です。これについては「木には腹と背がある」で書きました。その他にも様々な木の生育環境によって、いろいろな反り方があります。
人が育つ環境が一人一人違うように、木にも生育環境違いが出てきます。同じ山に育っても、木自身の性質、土地の形状や地質、日当たり、吹く風の強弱などが影響してどれ一つとして同じものはありません。したがって、材木を製材し木材となってその影響が表れることがあります。それが反りです。
反りは一般的には、木の木裏から木表の方向に反ります。Aでそれについては説明しています。 木が反り方のケースを下の図に示しました。
A 二つ目は、木の「表と裏」の関係によるものです。この木の「裏と表」についてここでは説明します。
植林されている木や自生の木は大量の水分を含んでいます。木は木の中心から外側に向かって毎年、同心円を描くようにように太くなります。これが年輪です。同時に空に向かって木の高さも伸びて行きます。そのため、木の中心から外側に行くに従って、木が太くなるための水分や栄養素が必要となるため水分が多く、木の中心よりずっと柔らかくなっています。
それを伐採すると、水分の供給は遮断されてしまいます。同時に伐採された木からも少しずつ水分が蒸発していきます。その木を下の図のように製材しますと製材時は平らな板であったものが、製材して放置して置きますと、右下の図(製材放置後)のように木の表側に反りが出てきます。これは、製材後も木から水分が蒸発して、水分の多い木の外(表)側の収縮の方が大きくなり「反り(そり)」が出てくるものです。
これは、どんな木であっても、その反りの大きい小さいはありますが起こることです。
木は収縮・乾燥していきますが、ある一定に達すると、安定します。その後は日本の気候の変化によって木の状態も変化していきます。湿気の多い梅雨には、木は水分を空気中から吸い、乾燥した秋冬には放出して乾燥します。
| 木は又、樹皮側を「木表」と呼び中心側を「木裏」と呼びます。「木表」と「木裏」とでは、「木表」側が窪むようにそります。この反り方を「幅ぞり(はばぞり」)といいます。 |
敷居や、鴨居は「木表」を建具側に来るように使います。これも反りによって、建具の開閉に支障が生じないようにする為です。また、板目の木は、板の場所により収縮率が違うため乾燥伸縮により反りが発生します。表皮側(年輪の外側)、つまり木表側に反ってきます。乾燥の十分な木ではこれを減らすことができます。また、柾目では起こりにくくなります。
| 木は乾燥・収縮により反(そ)ることは、すでにのべました。反ると同時に、左の図のように割れも生じます。特に、図のような心持ち材ではその傾向が著しくなります。
心持ち材は、芯去り材とくらべて強度があることから、柱に利用されますので、割れが目につくような位置に発現すると損害賠償の問題にも発展しかねません。
建築時に割れが、なくても柱として使われているうちに、柱の乾燥が更に進み割れが生じてくることがあります。最初から割れていれば、柱としては使用しなかった筈です。
そこで、柱にこの割れを事前に人工的でまた、計画的に入れることで、他の部分に割れを生じさせない方法があります。
それが左の図の下の図のような「背割り(せわり)」という方法です。機械ノコで切り込みを入れて、ここに事前に目地を入れ、割れを誘発するわけです。この背割りを入れた位置には壁が来るようにして割れが、目立たないようにします |
この方法は、鉄筋コンクリート造の建物でも行われています。壁にクラック(ひび割れ)が生じた建物は、見苦しいだけでな、雨水などの侵入により構造上も耐久性を損ないかねません。そこで、コンクリートの壁に、あらかじめ深い目地を入れて近くの壁にひび割れを起こさせないようにしています。これは、誘発目地といいます。ひび割れを計画している場所に誘い発生させるという意味です。
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