| 騒音は、外部から伝わることもありますが、同じ建物内部間でも伝わってきます。そのうち隣接するマンションなどの住戸間の界壁やホテルの客室間などにも騒音問題は発生しています。
音に対する反応は、人によったり、その時の気分などによってかなり許容の幅があります。そのような場合に客観的な基準があります。下の表は日本建築学会が公表している遮音適用等級とその意味です。
実際の建築物の隣り合う2室間の遮音性能を評価する尺度として「遮音等級」が設定されており、マンションやホテルの遮音性能の要求は、この遮音等級「D値」(表右)を尺度として発注されるのが通常です。すなわち各基準曲線が500Hzで示す音圧レベル差の数値を「D値」と呼びます。
D値は同一の遮音壁で隣り合う2室間の界壁を施工した場合でも「音の廻り込み」が含まれるため、部屋の設計仕様により、異なった値となります。
D値は実際の建築物の2室間の遮音性能(空気音遮断性能)を表します。 D値は、中心周波数125、250、500、1000、2000、4000Hzの6帯域測定し、日本建築学会の遮音基準曲線にあてはめ、上記6帯域のすべての測定値が、ある基準を上回るとき、その上回る基準曲線の内の最大の基準曲線の数値を「D値」と呼びます。

等級の意味するところは、下表に示す通りです。一般的に2級か3級が多く、建物の用途やグレードによって仕様は様々ですが、特級などになると、最初に建物の構造から事前に検討しておかないと、目標に到達できない、要求に至れないこともあります。


以上のように、一つの壁で仕切られているマンションに代表される、お隣からの音について、その基準を日本建築学会の基準で述べました。
さて、マンションなどの共同住宅では、同じ階に幾つもの別々の世帯が暮らしています。その生活スタイルも様々で、それがお隣の迷惑になっていることを案外気づきませんし、こちら側が不満を持たれていることにも気づいていません。文句をいいにいったら逆に文句をいわれたといった話さえ聞きます。
お互いに音に気を配るようにしたいものです。それにしても、同じ住戸の中の隣室やお隣である隣戸の音がどうして伝わるってくるのか?
まず、同じ住戸の中の隣室からの音についてです。当然何らかの仕切り壁があります。その壁について下記@に記したものが、一般的な例です。ここでは軽鉄の下地としていますが、木軸の下地でも同様です。
 | 同じ壁下地と仕上げでも工法によっては騒音を低減することができます。右側の工法は下地のLGS(軽鉄下地)のスタッドを千鳥に建てることによって大きく騒音の低減が可能です。ここで取り上げた吉野石膏では、具体的な低減値を出した工法を同社のWebで公開していますので、左記にリンクを載せておきます。(現在会社に問題は何らありませんが、ウェブサイトの表記に推奨できない表示がなされているため、改善されるまで表示の留保をします)
画像出典:吉野石膏 |
次のAはホテルの客室間の仕切りに利用されることがよくあります。マンションでは、賃貸の場合にはあり得るでしょうが、区分所有権がはっきりしている分譲マンションでは利用は見たことがありません。
ホテルの場合は、客室の広さの変更などが、Aのようなもので作ると、改装の時にコンクリート界壁より手間や費用が掛からず利便が増すため、利用されています。Aのような仕様なら、耐火性能や防音性能において、コンクリートの壁と差はありません。
 | 上の図のようにLGS(軽鉄下地)を千鳥にして、その間に吸音材(グラスウール)などを挟んで両面からボードをそれぞれ二枚張りすることで騒音を減らすことも可能です。
画像出典:吉野石膏 |
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