| 懸魚(けぎょ)は、神社仏閣の屋根に取り付けた妻飾りのことです。「懸魚」の「懸」の字は音読みでは「けん」で訓読みでは「かかげる」です。従って、魚を掲げるの意です。中国からの伝来で「懸」を「掛」と書くこともあります。
懸魚は、火に弱い木造の神社仏閣を火災から守るため、水に縁のある魚の形をした飾りを屋根に懸けて火伏のまじないとしたのが始まりと考えられます。魚の身代わりを屋根に懸けることが「水をかける」という意味にも通じています。これが懸魚に由来する呼び名の語源です。
瓦屋根の城郭・楼門などの棟飾りに用いる鯱(しゃちほこ)瓦や鴟尾(しび)なども同様に設けられたものです。建物が切妻屋根か入母屋造りの屋根部分があれば必らず付いており、全国の神社仏閣で確認できます。 恐らく殆どの人がこれを見ていると思われますが、意識的に見なければ見過ごしてしまうものです。
しかし、どこをどう見れば魚を懸(かかげ)たと見えるのか、見方によっては、「魚の開き」の頭部のようにも見えれば、金魚の顔を正面から見たようにもあるいは、デフォルメしたイラストの様にも見えます。しかし、中国の古い建物では間違いなく魚を懸けたモチーフのものがあることから、次第にデザイン化の変遷をたどって来たものと思われます。
「懸魚」の形には種々なものがあり、興味が尽きません。近くの神社や寺院などを是非見てください。
| | 懸魚の一例 国泰寺宿坊(富山県) | 魚を懸(か)けることから懸魚 |
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