| 「鴬張り」は現在では施工されることはありません。しかし、江戸の時代にはきちんとした工法として確立されていました。当時は「縁側」や「廊下」の室内側にある障子一枚が内部と外部を仕切る唯一つのものであったために、敷地の塀を越えさえすれば比較的容易に邸宅に忍び入ることができました。 よく時代劇で見かけるシーンですね。庭に侵入した忍者がが障子の向うにシルエットで浮かび上がった、館の悪代官のひそひそ話に聞き耳を立てるシーンがあるでしょう。其の障子の前に廊下のような部分が「縁側」や「廊下」です。そこから容易に建物の中に入れるのです。
従って、当時の防犯は敷地の周囲の高い塀と、庭を巡回する庭番によるものでした。テレビなどでは、重要な密会に庭番が一人も出ていないことや、外部に近い部屋でそれをするのもおかしな話ですが、そうでなければストーリ上面白くないからなのでしょうね。
そこで当時のセキュリティー設備のひとつとして「鴬張り」があったわけです。城郭や寺院の縁側や廊下に施され、人が床の板の上を歩く事によりキュッキュッと軋み音が鳴る様につくられた仕組みです。「鴬張り」は匠に床が鳴るように張られた技法で、こちらは計算して床が鳴るように施されたものです。静かに歩こうとするほど音が出るようになっており、そのため不審者と部外者でない者と判断するために、廊下を通過する際はある一定のリズムを守る事が定められていいます。
「鶯張り」の構造は下図のようなものです。現在の施工不良や長年の使用による床構造の歪みや痛みが原因の「床鳴り」とは構造を別にしています。
| 鶯とはこんな鳥 | | 鶯張りの構造 |
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