| タイルの歴史は古く、今日のような施釉タイルに近い形のものは、紀元前18世紀ごろ、ネザーケット(メソポタミア)のピラミッドに使われていました。レンガを焼いて建築物に使い、装飾建物としてのタイルも作られ、素地に浮きぼりを施して錫(ラスター)釉をかけた精巧なものが、紀元前数世紀ごろの遺跡からたくさん出土しています。 | 施釉タイル (紀元前7世紀頃) |
イスラム教の布教がタイルの技術と文化を世界に広め、中近東における寺院の内外装に盛んに用いられました。それが、後にスペイン・アルハンブラ宮殿を通 じてヨーロッパ世界に広がっていきました。
スペインからイタリアにもたらされた製陶技術は、ルネッサンス期の芸術復興の気運にのって盛り上がりを見せ、その後オランダ、イギリスなどでも独自の発展をとげることになったのです。そして19世紀後半になって初めて、規格寸法タイルとして工場生産されるようになりました。 日本では、「日本書紀」によると、飛鳥時代、百済から仏舎利とともに僧、寺工、画工、瓦博士が送られたと伝えられています。その際に一緒にもたらされたのが「せん(中国でのレンガの呼び名)」であり、日本のタイルの先駆けです。
その後は、製陶技術は発達していきましたが、建築材料としての焼き物は少なく、屋根瓦や敷瓦として寺院建築の床に、また腰瓦として壁などに用いられたぐらいだったのです。 | | 西本願寺腰瓦 17世紀頃 |
本格的にタイルが普及を始めたのは実は明治時代に入ってからのことなのです。西洋館が数多く建てられ、床や暖炉まわりにもタイルが使われました。現在の湿式タイルの原点であるれんがの国産化は明治初期のことです。
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